2012年8月19日日曜日

大学生の読書推進活動



「国民読書年」ということで、なんとなく読書推進活動が盛り上がっていた2010年。

公共図書館での各種イベントや、赤ちゃん向けの「ブックスタート」のほか

小学校~高校では、授業の中で読書指導を行ったり

「ブックトーク」「朝の10分間読書」「読書のアニマシオン」など

いろいろな形で読書推進活動がなされている。

自分の職場である大学図書館ではそれに関わる活動はしていないなぁ・・と思っていたが

Cinii、カレントアウェアネスポータル、新聞記事サイトなどで調べてみたところ、

大学でも以下のような活動が行われていることがわかった。



■大学生協


・読書マラソン(①)

約10年前から全国の大学生協で始まった活動。

活動の原型は2004年度に法政大学生協多摩店で始まった。

在学中に100冊を読破することをめざし、

読後に提出するコメ ントカードが一定枚数に達すると書籍割引券などが 提供され、

カードは実際の本と一緒にポップとして店頭に 出される。

早稲田大学、法政大学などでは大学読書サークルも生まれ、

店頭のフェアの入れ替え、コメントカードの整理、読書会の開催などを行っている。

2005年度からは全国の大学生協からコメントを募集 し「コメント大賞」を決める企画も開始。




■全学的取組

・フェリス女学院大学

図書館運営の委員会のメンバーの教員により提案され

2002年度から「読書運動プロジェクト」が開始。

平成17年度「特色ある大学教育支援プログラム」 (特色GP)採択。(4年間)

全学的に毎年テーマとなる1冊の本を決め、それに沿って

読書会・映画上映・授業開催など様々なプログラムを行う。

テーマとなる1冊は、『火車』、『壁』など、文学作品が中心。

図書館および有志の学生プロジェクトメンバーで運営。

これに関しては書籍が2冊発行されている。(②、③)




■授業

教員が自らの授業で読書指導に取り組んでいる事例


・常葉学園短大学(④)

学生は自分で選んだ本(ノンフィクションの、索引や参考文献・図表のあるもの)を多読し

レポートを作成。教員が添削・指導する。



・富山県立大学(⑤)

学生は思想・文学・科学など幅広い分野の選定図書の中から本を選んで、読後は感想文を提出。

教員が添削・指導する。

ちなみに「棚町方式」と呼ばれる方法を踏襲している



初年次教育などで、ライティングやリテラシー教育とあわせて

読解力についても指導している例もありそう(なので調べてみよう・・)。




■図書館

図書館で行っている活動はある意味すべて広義での読書推進活動と

いえなくもない。

たとえば、



・学生参加型サービス

・教員からの読書案内


などは学生の読書を推進するために行っていることである。

最近の、特色ある試みとしては、たとえば下記のようなものがある。



九州大学附属図書館「booklink」2011.9~

学生がおすすめ図書をウェブ上の本棚「ブクログ」に登録し

次の紹介者を指名することで連鎖的におすすめ図書がレビューされる仕組み。

実物も図書館に展示をする。




帝京大学メディアライブラリーセンター「共読ライブラリー」2012.5~

編集工学研究所と共同で、全学的な読書プロジェクトとして開始。

College MONDO(カレッジ問答)書架群:

学生の悩みや問いに答える本を、著名人・教官・他の学生などが選び配架

読書術コースウェア:

入学時にオンラインのコースをグループ学習し、読書に必要なスキルの習得をめざす




創価大学図書館「Soka Book Wave」2004年度~


学生有志と図書館で構成する団体「Soka Reading Project」が中心となり活動。

読書感想文を提出し、認定された件数に応じてポイントがたまり図書カードがもらえる。

その他講演会や特別展などのイベントも企画。

教育・学習活動支援センター開催の講座(文章読解スキル講座、文章力アップ講座、図書館活用力アップ講座など)

受講でもポイントがたまる仕組み。




京都外国語大学、読書運動「本の虫プロジェクト」2008.6~


「楽読楽書、めざせ100冊!」:学生自身による書評書き込みサイトで、

学生による学生への読書案内ともなっている。

「私のイチオシ」by外大教職員:教職員によるおすすめ本のサイト。


<参考文献>

①佐藤 由紀, 近森 節子, 酒井克彦. 大学生の読書実態と生協組織を通じた学生主体の読書推進運動の構築. 大学行政研究 = University Administration Studies. 2007, 2, p.61-73.

②フェリス女学院大学附属図書館. いま、図書館に求められるもの . ひつじ書房, 2009, 129p., (フェリス女学院大学の挑戦, 1).

③フェリス女学院大学附属図書館. 大学生『火車』を読む. ひつじ書房, 2009, 240p., (フェリス女学院大学の挑戦, 2).

④大場 博幸. 大学における読書教育:その必要性と目標・方法. 常葉学園短期大学紀要. 2010, 41, p.11-24.

⑤中 哲裕. 理工科系大学における国語教育 : 本学における実践的読書指導. 富山県立大学紀要. 2002, 12, p.90-99.





<まとめ>



今回調べてみて、自分が「読書推進活動」としてイメージしていたものには

「読書推進」と「読書指導」のふたつが含まれていたことがわかった。

二つははっきりと境界があるわけではないが


「読書推進」=本を読む習慣をつけるとか、より多くの本にふれてもらう 

「読書指導」=本を読む技術を指導する


というような違いがある。

その役割はそれぞれ違うとも言えるが、

この二つをうまく組み合わせなければ

効果が期待できないとも言える。

大学生は自ら学ぶことがより求められているが

読む力がなければ、いくら多読しても

得るものが少ないのではないだろうか。

大学での「読書指導」のほうにより焦点をあててしらべてみよう。


































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