2020年9月6日日曜日

【読書の記録】『「読む」って、どんなこと?』高橋源一郎




『「読む」って、どんなこと?』高橋源一郎(NHK出版、2020)

 この本は、「読む」行為を、深く考えてみようという趣旨の本です。いくつかの例文を題材に、筆者の高橋さんが「読む」行為を掘り下げ、その中で、「読む」に関する高橋さんの考えが示されています。

たとえば、「たくさん問題を産み出せば産み出すほど、別のいいかたをするなら、問題山積みの文章こそ、「いい文章」だ、ということです。つまり、その文章は、問題山積みのために、それを読む読者をずっと考えつづけさせてくれることができるのです。」(p64)とあります。

考えを促してくれる文章がいい文章だ、ということは、高橋さんは読書に、考えさせてくれることを最も期待しているということがわかります。

同時に、何がその人にとって「問題山積み」の文章かは、個々の人によって違うだろうなと思いました。(多くの人にとって「問題山積み」の文章、てのはあると思いますが)

それから本書ではあえて「学校では教えない」であろう文章がいくつか紹介され、それらを読むことを高橋さんが実践しています。またそれらはなぜ「学校では教えない」と思われるのか、そのことについても考察してみる、という「読み」もなされています。

それは文章自体を読むだけではなく、この文章はなぜ書かれたか、この文章について自分はどう思うのか、それはなぜか、というような、文章の外から、文章の立ち位置やそう思う自分の立ち位置、それを超えた様々な事象についてを考えるという高次の読み方なのかな、と思いました。

また、高橋さんの「読む」に対する考えは↓とも書かれています。

「絶対的に「悪い」ものがあるわけではありません。あるものが「善」にもなり、「悪」にもある。いや、「善」でかつ「悪」だったりもする。だからこそ、わたしたちは、用心しなきゃなりません。そうではありませんか。そのための武器こそ、「読む」ことなんだと思うのですけれど。」(p112)

読むことは考えること、そしてそれは、自分が無意識にとらわれている常識などから自由になるため、ということかな、と理解しました。いろいろと考えさせてくれる本でした。