2019年9月8日日曜日

子どもにわかりやすい絵本の表現

版元ドットコムより転載

子どもに歯ごたえのある本を
石井 桃子(著/文)
ISBN 978-4-309-02435-6   C0095 四六判 288頁
定価 1,700円+税
発行 河出書房新社
書店発売日 2015年12月10日




この本は、石井桃子さんの対談集です。
翻訳者、児童文学者として著名な石井桃子さんが、外国の本の出版や創作についてアメリカで学んだり、読み聞かせ・文庫活動の実践をする中で得られた考えを知ることができます。

子どものための本選びについては、アメリカで公共図書館が果たす役割の大きさにふれられています。アメリカでは公共図書館が、子どもが面白がって読む本を購入して代々引き継ぐ役割を果たしており、その結果、書棚の多くが、そのように引き継がれた基本図書で占められていたとのことでした。

つまり、大人は、多くの子どもが面白がって読む本から共通要素を見つけることで、子どもにとって面白い本の基準を割り出し、それをもとに選んだ本への子どもの反応を見る、ということを繰り返して本を選んできているということです。

その中で得られたひとつの基準としては、

「何を目安に選ぶかというと、子どもには、外の世界がどう目に見えるように書かれているかということです。――心の中の「淋しい」だの「悲しい」だのっていうことは、読み手の心の中におこればいいことです。やっぱし「泣いた」とか「お母さんがいなかった」とかいう心の中におこる情緒は、物か事で表さなくちゃならない」(p126)

と言われており、そうやって具体的に物事が動く方法で書かれている物語の例として、昔話を挙げられています。そして出来事でなく、心理描写、情景描写に分量が割かれている場合、小さい子供には理解がしづらく訴えるものが少ないのではないかと言われています。

子どもにこういう絵本を読ませなきゃいけない、ではなく、子供に分かりやすい絵本はこんなのかなぁ、という意味で、とても参考になるなぁと思いました。

ちなみに、そうやって物事が明確に目に見える形で描かれているとき、「自分もその感情を感じたことがある」と状況を思い出しやすくなると思いますが、そのときの感情が「悲しい」「さびしい」という言葉であらわされるということは、もしかすると親が適宜会話などでフォローすることで身につくのかもな。。(ラべリングを知るのはあとからゆっくりでいいと思いますし、「語彙を増やすために教えなければ!」という気合が先行すると子どもも楽しめないかもしれないので自然な範囲で)と個人的に思いました。

2019年9月7日土曜日

読み聞かせの影響に関する文献を調べてみた

娘はもうすぐ9歳、今も毎日ではないけど絵本を一緒に読んでます。
何百ページもあるハードカバーもガンガン読めるのに絵本を読んでという姿を見ると、やっぱり私とのコミュニケーションの時間の意味が大きいのかなぁと思います。
一方、会話中に本からの知識をぱっと教えてくれるあたり、本が好きなだけじゃなくちゃんと定着してるんだなぁと思います。(親バカ)

読み聞かせは色々な影響(言葉の力がつく、本好きになるなど)を与えるという話はよく耳にし、うたがう人もあまりいないと思いますが、どちらかというと自分の大学図書館員としての興味から、研究ではどれくらい明らかになってきているのだろうと文献をいくつか読んでみました。

読書への意欲と読書の意味づけ : 読書量と読書に対する評価

  • 中学・高校・大学生・大学院生合計281名を対象にした108項目のアンケート。
  • 分析の結果、1ヶ月の読書量が多い回答者・読書が好きな回答者の共通要素の傾向として、家庭の蔵書量や読み聞かせをしてもらった経験、本を買ってもらった経験、親が読書好き、図書館につれていってもらった経験などの家庭環境が挙げられることが分かった。

絵本の読み聞かせと親子のコミュニケーション

  • 幼稚園で読み聞かせボランティアをしている母親9名に、家庭での読み聞かせについてインタビューを実施
  • 多くは0歳児で読み聞かせを開始
  • 子供が絵本の内容を覚えたり兄弟に読んであげるなどの変化のほか、親が子供の変化に気づける、共有するものができて普段の会話などがわかりやすくなる等親子関係における変化があったと回答があった

子どもの言葉を育む読み聞かせの調査研究 

  • 熊本市内の小学生386名にアンケート
  • 0歳児から継続して読み聞かせをしている方が、それ以外の場合より、学業成績が良い傾向にあった
  • 0歳児で読み聞かせを始めた方が、それ以外の場合より、ひとりで本を読み始めるのが早かった
  • 0歳児で読み聞かせを始めた方が、それ以外の場合より、小学校時点での読書好きが多かった

幼児の心情理解に及ぼす絵本の読み聞かせの効果

  • 保育園年長児40名のうち半分に3冊の絵本を2回読み、読んだ子どもと読まない子どもで心情の理解度をはかった(状況を聞いて、そのときの感情に合った表情を描いた絵を選ぶ)。
  • 読んだ子どものほうが理解度が向上するという結果が得られた。

児童のストーリー理解に及ぼす読み聞かせの効果

  • 学校での読み聞かせを念頭にした実験(2年生と5年生、計167名。)
  • 同じ絵本について、読み聞かせをする場合と黙読する場合で、理解の度合いをテストで確認。
  • 結果として、読み聞かせが、黙読に比べて理解促進に効果がある傾向があった(先行研究では2-3年生のみだったが、今回の実験では5年生も)

(これがみんなにあてはまるかというと当然個々の子どもによって違うのでしょうが)読み聞かせによって、将来の読書量が増える、親子のコミュニケーションがとれる、読書好きになる、心情の理解度が高まる、ストーリーの理解度が高まるなどの傾向がそれぞれ結果としてみられていたようです。いろいろある研究のうちほんの一端をランダムに読んだだけではありますが、改めてやっぱりそうなんだと確認できました。