https://doi.org/10.5926/jjep.67.12, (参照 2020-05-30).
内容
これまでに音読と黙読の比較研究では↓のような結果が出ているそうです。
- 小学校低学年での理解度は音読>黙読だが、高学年では黙読=音読か黙読>音読
- 読み能力が低い場合に理解度は音読>黙読
-
読み能力が低い場合、音読・黙読で眼球運動が同じだが、読み能力が高い場合には音読・黙読で眼球運動が異なった(理解しにくい場所にとどまったり、わからない部分に戻るなど)
こちらの論文では↓の2点が目的とのことでした。
- ”音読条件と黙読条件の間にみられる違いと,内声化強制条件と内声化抑制条件の間にみられる違いとを比較することで,音声化と内声化の機能の共通点と相違点について検討する”
- "内声化を行う程度によって読み手を分類し,文章理解や眼球運動に違いがあるかを調べる"
実験は↓の2つです。いずれの場合も”音読,通常の黙読,文章のすべてを内声化させる黙読(以降,内声化強制),内声化を抑制しながらの黙読(以降,内声化抑制)という₄条件を設け,文章読解時の記憶や理解成績,読解にかかる時間,および眼球運動を比較”しています。
実験①
- 大学生24名(男12、女12)※内声化抑制ができなかった2名のデータは省いた
- 12セットの課題を実施(文章1つを読んで、逐語記憶問題3問、文章内容問題3問に回答)
実験②
- 大学生23名(男7、女16)※内声化抑制ができなかった2名、事前調査で内容理解できなかった1名のデータは省いた
- 12セットの課題を実施(文章1つを読んで、文章内容問題3問に回答)
- 普段の内声化スタイルを事前に調査⇒内声化多12名、内声化少8名
- 音読は黙読と比べ時間がかかり、眼球の運動が少なく、黙読時と成績は変わらなかった
- 内声化は内声化しないのと比べ時間がかかるが、内声化するほうがしないより文章内容問題の成績が良い結果も出た(実験②)
- 通常内声化をしているかしていないかによって問題の成績への影響が異なった
- 通常内声化をしている場合の成績
- 内声化抑制<黙読<内声化強制<音読
- 通常内声化が少ない場合の成績
- 内声化抑制<音読<内声化強制<黙読
- 内声化は音読同様に内容理解を促進する可能性があるが、時間がかかるなどのデメリットもある。一方、内声化をしない黙読は、少ない時間で内容理解も促進できる高次の読み方だが、それ自体ができない場合も多い。
- 年齢や対象となる文章などについても考慮してさらなる検討が必要。
感想
同じ本を読むという行為でも、人によって頭の中でのプロセスが違うということは興味深いです。
こうすると絶対に読解力が上がるというのはいえないとしても、内声化する・しないというやり方があることを知ったり、わからない言葉のところでは立ち止まって考える・わからなかったところに戻るなどの読み方を知っておくことはひとつのヒントかもしれません。