2019年10月5日土曜日

PISA型読解力に関するメモ

PISA

  • 2000年よりOECDが15歳を対象に3年ごとに実施している学力テスト
  • 数学的リテラシー、科学的リテラシー、読解力をはかっている
  • PISAではかっている上記の能力は、OECDが定める「キーコンピテンシー」の一部である
  • 「キーコンピテンシー」は、知識や読み書き等の学習能力だけではなく、学校や職場に限らずに人生の成功や社会の良好な動き(生産的な経済、民主的なプロセス、社会団結、平和などを含む)に貢献するような総合的な資質・能力
    • カテゴリー①相互作用的に道具を用いる
      • 言語、シンボル、テキストを用いる(1A)
      • 知識や情報を用いる(1B)
    • カテゴリー②異質な集団で交流する
      • 他人といい関係を作る(2A)
      • 協力する(2B)
      • 争いを処理し解決する(2C)
    • カテゴリー③自律的に活動する
      • 大きな展望の中で活動する(3A)
      • 人生計画や個人的プロジェクトを設計し実行する(3B)
      • 自らの権利、利害、限界やニーズを表明する(3C)
  • PISA型読解力は、読むスキルだけではない広い意味の言語力を指している
    • 情報の取出しだけでなく理解や評価も含んでいる
    • テキストを読むだけではなく活用することも含んでいる
    • テキストの内容だけではなく構造・形式や表現法も評価すべき対象となる
    • テキストには文章(連続的テキスト)だけでなく、図表やグラフなどの非連続型テキストを含んでいる

日本の政策

  • 2000年以降日本のPISAテスト成績(特に読解力)が低下したことを受け、学習指導要領で「言語生活の充実」がうたわれるようになった
  • PISA型読解力を高めるために2007年度から「全国学力・学習状況調査」が実施された
  • 2014年には学校図書館法改正により、学校司書配置が法制化された
  • 2015.12に文科省は『読解力育成プログラム』開始
    • 3つの重点目標:1. テキストを理解評価しながら読む力を高める取組の充実、2. テキストに基づいて自分の考えを書く力を高める取組の充実、3. 様々な文章や資料を読む機会や、自分の意見を述べたり書いたりする機会の充実
    • 5つの戦略:1. 学習指導要領の見直し、2. 授業の改善・教員研修の充実、 3. 学力調査の活用・改善等、4. 読書活動の支援充実、5. 読解力向上委員会(の開設)
  • 2017.3公示の新しい学習指導要領でも、PISA型読解力は「全ての学習の基盤となる資質・能力」の一つとして、その能力の向上の必要性が提起されている

参考

  1. 田中博之. 読解力とはどのような力か. 情報の科学と技術. 2018. 68(8), p.390-394 https://doi.org/10.18919/jkg.68.8_390
  2. 河西由美子. 情報リテラシー概念の日本的受容-学校図書館と情報教育の見地から- . 情報の科学と技術. 2017. 67 (10) , p. 514-520 https://doi.org/10.18919/jkg.67.10_514
  3. 米谷優子. 日本における読書教育と読書推進策 : 情報リテラシー教育との関連から. 園田学園女子大学論文集. 2011. 45, p.019-040 https://www.sonoda-u.ac.jp/tosyo/ronbunsyu/園田学園女子大学論文集45/019-040.PDF

2019年9月8日日曜日

子どもにわかりやすい絵本の表現

版元ドットコムより転載

子どもに歯ごたえのある本を
石井 桃子(著/文)
ISBN 978-4-309-02435-6   C0095 四六判 288頁
定価 1,700円+税
発行 河出書房新社
書店発売日 2015年12月10日




この本は、石井桃子さんの対談集です。
翻訳者、児童文学者として著名な石井桃子さんが、外国の本の出版や創作についてアメリカで学んだり、読み聞かせ・文庫活動の実践をする中で得られた考えを知ることができます。

子どものための本選びについては、アメリカで公共図書館が果たす役割の大きさにふれられています。アメリカでは公共図書館が、子どもが面白がって読む本を購入して代々引き継ぐ役割を果たしており、その結果、書棚の多くが、そのように引き継がれた基本図書で占められていたとのことでした。

つまり、大人は、多くの子どもが面白がって読む本から共通要素を見つけることで、子どもにとって面白い本の基準を割り出し、それをもとに選んだ本への子どもの反応を見る、ということを繰り返して本を選んできているということです。

その中で得られたひとつの基準としては、

「何を目安に選ぶかというと、子どもには、外の世界がどう目に見えるように書かれているかということです。――心の中の「淋しい」だの「悲しい」だのっていうことは、読み手の心の中におこればいいことです。やっぱし「泣いた」とか「お母さんがいなかった」とかいう心の中におこる情緒は、物か事で表さなくちゃならない」(p126)

と言われており、そうやって具体的に物事が動く方法で書かれている物語の例として、昔話を挙げられています。そして出来事でなく、心理描写、情景描写に分量が割かれている場合、小さい子供には理解がしづらく訴えるものが少ないのではないかと言われています。

子どもにこういう絵本を読ませなきゃいけない、ではなく、子供に分かりやすい絵本はこんなのかなぁ、という意味で、とても参考になるなぁと思いました。

ちなみに、そうやって物事が明確に目に見える形で描かれているとき、「自分もその感情を感じたことがある」と状況を思い出しやすくなると思いますが、そのときの感情が「悲しい」「さびしい」という言葉であらわされるということは、もしかすると親が適宜会話などでフォローすることで身につくのかもな。。(ラべリングを知るのはあとからゆっくりでいいと思いますし、「語彙を増やすために教えなければ!」という気合が先行すると子どもも楽しめないかもしれないので自然な範囲で)と個人的に思いました。

2019年9月7日土曜日

読み聞かせの影響に関する文献を調べてみた

娘はもうすぐ9歳、今も毎日ではないけど絵本を一緒に読んでます。
何百ページもあるハードカバーもガンガン読めるのに絵本を読んでという姿を見ると、やっぱり私とのコミュニケーションの時間の意味が大きいのかなぁと思います。
一方、会話中に本からの知識をぱっと教えてくれるあたり、本が好きなだけじゃなくちゃんと定着してるんだなぁと思います。(親バカ)

読み聞かせは色々な影響(言葉の力がつく、本好きになるなど)を与えるという話はよく耳にし、うたがう人もあまりいないと思いますが、どちらかというと自分の大学図書館員としての興味から、研究ではどれくらい明らかになってきているのだろうと文献をいくつか読んでみました。

読書への意欲と読書の意味づけ : 読書量と読書に対する評価

  • 中学・高校・大学生・大学院生合計281名を対象にした108項目のアンケート。
  • 分析の結果、1ヶ月の読書量が多い回答者・読書が好きな回答者の共通要素の傾向として、家庭の蔵書量や読み聞かせをしてもらった経験、本を買ってもらった経験、親が読書好き、図書館につれていってもらった経験などの家庭環境が挙げられることが分かった。

絵本の読み聞かせと親子のコミュニケーション

  • 幼稚園で読み聞かせボランティアをしている母親9名に、家庭での読み聞かせについてインタビューを実施
  • 多くは0歳児で読み聞かせを開始
  • 子供が絵本の内容を覚えたり兄弟に読んであげるなどの変化のほか、親が子供の変化に気づける、共有するものができて普段の会話などがわかりやすくなる等親子関係における変化があったと回答があった

子どもの言葉を育む読み聞かせの調査研究 

  • 熊本市内の小学生386名にアンケート
  • 0歳児から継続して読み聞かせをしている方が、それ以外の場合より、学業成績が良い傾向にあった
  • 0歳児で読み聞かせを始めた方が、それ以外の場合より、ひとりで本を読み始めるのが早かった
  • 0歳児で読み聞かせを始めた方が、それ以外の場合より、小学校時点での読書好きが多かった

幼児の心情理解に及ぼす絵本の読み聞かせの効果

  • 保育園年長児40名のうち半分に3冊の絵本を2回読み、読んだ子どもと読まない子どもで心情の理解度をはかった(状況を聞いて、そのときの感情に合った表情を描いた絵を選ぶ)。
  • 読んだ子どものほうが理解度が向上するという結果が得られた。

児童のストーリー理解に及ぼす読み聞かせの効果

  • 学校での読み聞かせを念頭にした実験(2年生と5年生、計167名。)
  • 同じ絵本について、読み聞かせをする場合と黙読する場合で、理解の度合いをテストで確認。
  • 結果として、読み聞かせが、黙読に比べて理解促進に効果がある傾向があった(先行研究では2-3年生のみだったが、今回の実験では5年生も)

(これがみんなにあてはまるかというと当然個々の子どもによって違うのでしょうが)読み聞かせによって、将来の読書量が増える、親子のコミュニケーションがとれる、読書好きになる、心情の理解度が高まる、ストーリーの理解度が高まるなどの傾向がそれぞれ結果としてみられていたようです。いろいろある研究のうちほんの一端をランダムに読んだだけではありますが、改めてやっぱりそうなんだと確認できました。


2019年4月27日土曜日

絵本の「絵」がえがくもの

絵本の「絵」の表現に関する面白いコンテンツがあったので見てみました。
Exploring books for children: words and pictures(Open UniversityのMOOC)

全8回分の内容にわかれており、登録をすれば、進捗管理や小テストなどもできるようです。私は登録しようとしたらなぜかエラーになり内容を読むだけにしましたが。。↓の構成でした。
  1. Words and pictures in children’s fiction through the ages
  2. Making sense of pictures
  3. Combining words and pictures
  4. Book design and intended readership
  5. Illustration
  6. Illustration as interpretation: the example of Alice
  7. Analysing images: composition and symbolism
  8. An authorstrator comments on his craft


この講義では、絵本において言葉(テキスト)では語りきれないことを絵が語っているということについて、色々な具体例とともに説明がなされていました。

たとえばピーターラビットの絵本で、母親が子供たちに、マクレガーさんの庭にはに行かないように注意するシーン

テキストはそのことを単に書いているだけですが、絵では4匹の子どものうちピーターラビットだけ母親に背を向けて話をきいておらず、いかにももう出発したそうな顔をして、読み手を次のページへ促していることが紹介されていました。
絵を見ると確かにそうで、このあたりのことが文字でも書いてあったら過剰な感じもするし、こうやって絵本では絵とテキストが補完しあってるんだなぁと思いました。

また、1955年からはCILIPによってKate Greeaway賞がおくられるようになっている通り、絵本における絵の重要性が次第に認識されるようになっているそうです。絵本において、テキスト同様、絵もおはなしを物語る役割を持つという理由で、絵本画家のことを指した‘authorstrator’という言葉があるそうです。

アンソニー・ブラウンの絵本のイラストから、2つの場面がどんな感情や雰囲気を示しているのかを考える事例もありました。色味、キャラクター同士の配置、テーブルの上にあるもの等がそれぞれのシーンの雰囲気を強調していると考えられることが紹介されていました。

アンソニー・ブラウンさんはインタビューで、絵本に盛り込めるテキストは分量上限られているが、絵はさまざまなこと(登場人物の感情や、次に何が起きるか、過去に何が起きたか等)を語ることができ、そういった手法を次第に使うようになったと語られていました。

学術的な研究で提唱された絵本の絵の表現の読み解き方(配置、構図、使用されている色や線の特徴などから読み解く)、も紹介されていましたが、同時に、こういった分析は絶対というわけではなく懐疑的な立場の人もいることなども示されていました。

わかったことをまとめると

  • 絵本の絵には、テキストを補完する大きな役割がある
  • 絵は、ある特徴(色、モチーフ、構図など)をもつことによって特定の印象を人に与えやすい
  • その性質を使って、絵本の中の、登場人物の感情やその場面の状況がうまく表されていることがある

ということです。

日々絵本を読むときに、こういう知識ありきで絵を分析的にみたらつかれそうだし、著者の意図を決めつけることもできないとは思いますが、人の心をつかむ絵本は、そうやって絵の力を生かして物語を効果的に伝えているゆえであることも多いんだろうなと、興味深く感じました。

2019年3月30日土曜日

絵本の美術館、絵本と美術館

この本を読みました。
ぼくが安曇野ちひろ美術館を作ったわけ』松本猛著、講談社、2002

安曇野ちひろ美術館とは、世界で初めての絵本美術館として東京にちひろ美術館ができた20年後に新たに設立された、もうひとつのちひろ美術館です。 ※ちひろ美術館
この本は、美術館の視点から絵本についても考えるきっかけをくれるとても面白い1冊でした。

東京のちひろ美術館をつくられた際は、絵本の原画が芸術的な価値を認められていなかった状況の打開という動機が大きかったようですが、安曇野という自然の豊かな土地で新たな美術館をつくったときには、美術館で絵を見ることをもっと楽しめるようにという強い思いがあったようです。本では次のようなことが書かれていました。

  • 絵を見るとはそもそもどういうことか
  • 絵本の歴史
  • めざした美術館像・こだわり

絵を見るとはどういうことか?については、
  • 知識を得たり勉強するためだけではなく(狭義の勉強ということですが)、心地よい気分になるために見る
  • 自分が好きな、繰り返し見たい1枚、手元におきたい1枚と出会うために見る。
  • 絵の背景にある知識を知ることは絵を楽しむことを補足もするけど、それで絵を知ったことにしてはもったいなく、絵を見て何を感じるかを大事にする。

といったことが書かれていて、絵本についてもほとんど同じことがいえるだろうなぁと、最近の自分の中のもやもやが言語化された感じがしました。絵本も、数ある中から自分の好きなものを探すのが楽しい。

また、絵本の歴史というと、子どものための絵本の歴史(『世界図絵』など)から話が始まることもありますが、この本では『死者の書』から宗教画、日本の絵巻物等、子供向けに限らず人は長い間絵を物語とセットで書いてきていることが紹介されていて、物語と切り離されたファインアートの歴史は肖像画をのぞいてはまだほんの200年くらいだということです。
そう考えると絵本が大人も楽しませるものであることがとても腑に落ちました。

そういった考えに基づいてつくられた絵本美術館は、何より子どもも大人もゆったりリラックスして絵や絵本を楽しめる空間をめざして、家具や建物、カフェの飲食物まで、たくさんのこだわりのもとにつくられているようです。周りにはたくさんの自然があり、いつか行ってみたいなぁと思いました。

2019年3月16日土曜日

娘と楽しむ児童文学

最近は、娘と共通の児童文学作品をよく読みます。
絵本を読んできてよかったのは、日常的に、あの絵本のお話みたいだねーとかそういう共通の話題が自然に出て楽しい、ということだったので、娘の読むもののレベルアップにあわせて自然とそうなりました。
借りたり買ってたりしておいておくと、大体娘は私より先に読んでしまっています。

ここ一年くらいで面白かった本は
■『ふたごの兄弟の物語(トンケ・ドラフト 作、西村由美 訳(岩波書店)

外見は瓜二つ、性格はかなり違うふたごの兄弟が、いろいろな難題に出会って、知恵を使って挑んでいく話です。昔話のように色々な出来事がおきてお話は進むのですが、その中にも、青春特有(?)の心情の描写も出てくるのがまた面白かったです。

娘は私より先に読み終わり、読み終わった瞬間「ジャコモ(ふたごの弟)が仕事を見つけた!」と嬉しそうに言っていました。
その感想だけ聞いて、「どんな話?」と思っていたのですが、読むと確かに、順調に仕事を見つけて地道にキャリアを築く兄ラウレンゾーに比べ、これという仕事を見つけられずぶらぶらしている弟ジャコモの悩み(そうは見せないのですが)みたいなのが確かにこのお話の大きな軸な感じがしました。娘はそんな部分に共感して読んでいたんだなぁ。と親ばかながら感心しました。


他にも↓等、娘に続いて私も読んで、あれこれ話せたのは楽しかったです。
読みやすいと思った順です。
■『おじいちゃんの大脱走』デイヴィッド・ウォリアムズ 著、三辺律子 訳(小学館)

長くつしたのピッピアストリッド・リンドグレーン 作、大塚勇三 訳(岩波書店)
 『ピッピ 船にのる
 『ピッピ 南の島へ

■『ふたりのイーダ』松谷みよ子 著、司修 絵(講談社)

扉のむこうの物語岡田淳 著(理論社)


娘の読書力に私がいつひきはなされるか、て状況でもありますが、これからもついていける限りは一緒に読んで共有できるのは楽しみです。

私は小さいころも読書が好きでしたが、大人になってから、そのころ影響を受けた本とかよく覚えている本がないことに気づいてショックでした。
小さいころおそらく楽しく読んでたし、どこかで何か影響は受けているかもしれず、嘆いても仕方ないですが、冷静に理由を考えると、私は読んだ本について大人や周りの人と話さなかったし、本当はあまり理解していなかったのかなぁ。話すことで理解が深まるんだろうなぁとも思います。

2019年2月10日日曜日

好きな絵本


8年子どもと絵本を読んで実感したことのひとつに、子どもと楽しむために絵本を読むなら、自分が好きな絵本を読むことがかなり大事、ということがあります。
絵本を読んであげる時は、読み手の感動や熱意も子どもに一緒に伝わる、と松居直さんも書かれています。(『絵本とは何か』)

で、絵本をたくさん見てきて、確かに好きな絵本とそうでもない絵本があります。
古く読み継がれている絵本を好きと思うことも多いですが、必ずしもそうでもなく、やっぱり絵本と読む本人(タイミングによってもきっと違う)の組み合わせなんだなぁと思います。

自分の好きな絵本(一部ですが)を書いておこうと思いました。

はなのすきなうし
作:マンロー・リーフ  絵:ロバート・ローソン  訳:光吉 夏弥  出版社:岩波書店  発行日:1954年12月10日

絵は白黒だし、かわいい絵でもないですが、とても心惹かれる絵本です。
のんびり自分の好きなことをする牛も、その子どもをそのまま見守るお母さんも素敵だなぁと思います。
野原に点々と咲く花の絵の描写がきれいで、余白の大事さも感じられます。

モチモチの木
作:斎藤 隆介  絵:滝平 二郎  出版社:岩崎書店  発行日:1971年11月20日

主人公の豆太の育ての親である「じさま」の、名台詞に感動して、時々読んでしまう絵本です。
切り絵が美しく、それぞれのシーンに合った色調や雰囲気で描かれています。
子どもが自分の弱さを乗り越えて一歩前進するところが描かれていて、読んで満足感があります。

8年間の間には、子どもには自分の好みだけじゃなくていろんなものに触れてもらいたいなーと思い、あえて、自分の基本的な好みとは違うタイプの絵本でもいいなと思うものを探して買ったり、親戚からもらった絵本を読んでみたりしてきました。そういう中からも、たとえば↓のように積極的に好きと思うものもできて、よかったと思います。

しちどぎつね
作・絵:田島 征彦  出版社:くもん出版  発行日:2008年04月

落語絵本。かけあいが面白くて、声に読んで出したときはすごく楽しいです。
絵は味があり、滑稽さ、恐ろしさなど、それぞれのシーンの雰囲気がよく出ていて、物語の面白みを増してくれています。


やまこえのこえかわこえて 
作・絵:こいで やすこ  出版社:福音館書店  発行日:2001年10月

きつねのきっこが、他の動物たちと協力して、お祭りのいなりずし作りをします。ちゃんとお話の満足感を得られる絵本だなぁと思います。
絵を見ていると色々とヒントもあって、楽しめます。
あたたかみがあって、好きな絵本です。

自分の「好き」を追求しつつ、他のものにも目を向けて、自分がそれも好きになったらなおよし、絵本に限らず母親(や身近な大人)が心に響くものが多かったら、子どもにもそれが伝わるのかなぁと思います。

2019年1月20日日曜日

絵本の賞の選定基準

絵本に関する賞の選定基準を知りたいと思い、有名な2つの賞について見てみました。下記のページに賞の一覧があります。
児童文学賞一覧(海外の主な児童文学賞)-国立国会図書館国際子ども図書館
児童文学賞一覧(国内の主な児童文学賞)-国立国会図書館国際子ども図書館


1.コルデコット賞(Caldecott Medal)


概要

  • 1938年に創設。
  • 19世紀英国の絵本作家、ランドルフ・コルデコットにちなんで命名されている
  • Association for Library Service to Children(ALA=米国図書館協会の1部門)により授与される
  • 前年に米国の出版社により米国で出版された、英語の、子ども(14歳以下)のための絵本を対象に選定し、画家に授与される

基準

  • いかにうまく芸術的なテクニックを採用しているか
  • ストーリー、テーマ、コンセプトをいかにうまく絵で表現しているか
  • ストーリー、テーマ、コンセプトにいかに合った方法を採用しているか
  • 筋、テーマ、キャラクター、設定、ムードや情報をいかに描写できているか
  • 子供という読み手をいかに理解して絵を表現しているか
(参照:http://www.ala.org/alsc/awardsgrants/bookmedia/caldecottmedal/caldecottterms/caldecottterms


というわけで、あくまで、絵本においてストーリーやテーマを表現する役割としての絵を評価対象としています。
この賞は教訓的な面や人気を評価する賞でないと断ってあります。

2.ケイト・グリーナウェイ賞(Kate Greenaway Medal)


概要

  • 1955年に創設。
  • 19世紀の絵本画家ケイト・グリーナウェイにちなんで命名されている。
  • 英国で前年に出版された、英語の、子ども用の本を対象に選定し、絵の観点で素晴らしい作品に対して授与
  • CILIP(the Chartered Institute of Library and Information Professionals)により選定・授与される

基準


芸術的な質が高く、刺激をあたえ満足のゆく視覚的経験をもたらし、後に印象を長く残す作品におくられる。評価対象は絵のほうで、テキストに関しては絵との相乗効果が評価される。

  • スタイル:媒体が適切か、クリエイティブで突出しているか、テーマにあっているか、作品全体における質の保持
  • フォーマット:タイポグラフィが適切か、レイアウトが適切か、本のサイズ・形は適切か、表紙・裏表紙・標題紙がうまく利用されているか
  • 絵とイラストの評価:絵が読者の理解を深めているか、レイアウト上で絵とテキストがうまく配置されているか、絵とテキストが一致しているか、絵がテキストを深めているか(単なる装飾でないか)、情報(科学)の本である場合に情報が正確か
  • 視覚的な経験:読者に新たな経験をもたらしたり過去の経験を想起させられるか、異なるレベルの読者に対してそれぞれうまくうったえかける本か、本の美的な質、読者への印象

(参照:http://www.carnegiegreenaway.org.uk/awards-process.php#criteria


(上記の具体的なポイントは、必ずしもすべてのノミネート作品にあてはまるわけではないとことわってあります)
やはり、絵を中心にした評価がなされるようです。

こうやって選ばれた作品を読まなければいけない!というわけではなく、好きな絵本を読んでいいと思うのですが、いずれの賞もストーリーをうまく伝える絵の表現という点で突出した作品におくられるようなので、そういった絵本は一つの世界をうまく作って、多くの人の心を打つのだろうなとも思います。

多くの方の経験に基づいて培われてきた基準を参考にしつつ、自分の感覚もたよりに、これからもぽつぽつ集めていこうと思います。