2012年6月21日木曜日

テレビとの付き合い方


絵本についてのまとめ、第七弾です。

今回は、絵本と直接関係はないようにも思えますが、

テレビについてまとめたいと思います。


☆赤ちゃんはテレビが好き?


赤ちゃんにテレビを見させて家事をするということは今や珍しくないようです。

赤ちゃんにテレビを見せたら、じっと見ているので

テレビが好きなんだと思い見せていた、というケースもあるようですが

赤ちゃんはテレビが好きなのではなく、より刺激のあるものに目を向ける習性にあります。

止まっているものより動いているもの、地味な色より派手な色に目を向けるので

テレビがついていればそちらに目を向けてしまいます。



☆日本小児科学会の勧告・日本小児科医会の提言



赤ちゃんのテレビ視聴に関する影響は科学的にはっきり立証されたわけではありません。

しかし、日本小児科学会は、2004年に次のような内容の勧告を出しています。


・2歳以下の赤ちゃんは長時間の視聴は避ける

・1人で見せない

・授乳中や食事中は見せない など


日本小児科学会 | 乳幼児のテレビ・ビデオ長時間視聴は危険です


この学会による勧告の前に、米国でも同様の勧告が出されたそうです。

また、この学会が1歳6か月の子どもを対象に行った調査では、

長時間のテレビ視聴を行っている子どもに有意語発現の遅れが見られる傾向が

あったそうです。

テレビ視聴時は親子の会話が減ってしまうこと、

子どもの言語の取得には双方向のコミュニケーションが必要であり

テレビだけではどうしてもその役割は果たせないこと

などが指摘されています。


また、日本小児科医会も2004年に次のような提言を発表しています。


・2歳以下の赤ちゃんのテレビ視聴は控える

・すべてのメディアに接する合計時間に制限を設ける など


日本小児科医会 「子どもとメディア」の問題に対する提言


しかし現在では核家族が増え、日中に母子二人ということは珍しくありません。

そんな中テレビの手を借りてしまうことを一概に責めることはできないと思います。


しかし親は、テレビの影響の大きさを知った上で、

赤ちゃんの間はできるだけ見せないようにする、

大きくなってからも付き合い方をうまく考える努力が必要です。


☆テレビのかわりに読み聞かせを


できるだけ赤ちゃんにテレビを見せないですむように・・・

そんなときに絵本の読み聞かせ をぜひ取り入れていただきたいと思います。

私自身、「テレビでもつけよう」となってしまうのは

どうにもこうにも娘が不機嫌なとき、家事が進まないとき、

自分がつかれたとき・・などです。

娘に限っては、絵本を2-3冊読んであげればかなりの確率でご機嫌になり

その後家事をしたりすることができます。

(もっと、もっと!となり、終われなくなるときもありますが。)

絵本への反応は子どもによりそれぞれだとは思いますが

子どもがお母さんにかまってほしいときには絵本の読み聞かせは

効果があるのではないかなぁと思います。


☆読書とテレビの違い


さらに、子どもが大きくなってきたとき(もちろん親自身も)

読書をするか、テレビを見るかでは様々な違いがあります。

読書とテレビの違いとして、以下のようなことが言われています。


・本よりテレビの方が語彙が少ない

・本を選んだり文章を読むという行為は、

テレビをつけて見る行為より自発的であり、意思・行動力を養う

・読書は情景を思い浮かべたり文法を駆使したりと技術を要するが

テレビは一方的に受容することが多い

・テレビにはCMがつきものであり、CMにより集中力が寸断されたり

なんでも安易に解決できるような感覚を身に着けたりしてしまう

・テレビに登場する人物には偏りがあり、実際の世界とは異なる



※本とテレビの比較については、この本に詳しく書いてあります。


また、テレビを見ているときは休息時よりも代謝がおちているくらい

頭と体が活動していないそうです。


だからといって絶対にテレビを見てはいけない、

本さえ読んでいれば子どもは健全に育つ、というものでもないですし

テレビと読書以外にも行うことは山ほどあると思いますが

たとえば1日3時間当たり前のようにテレビを見ていると

実はすごくテレビの影響を受けているかもしれないということは

自覚の必要があるのかなーと思います。

10-30歳の青少年5000人を対象にした下記の調査によると

第5回情報化社会と青少年に関する意識調査報告書 
平成19年12月 内閣府政策統括官(共生社会政策担当)

1日の平均テレビ視聴時間は2時間45分くらい、本や雑誌を読む時間は約40分だそうです。








2012年6月19日火曜日

絵本を繰り返し読むこと

絵本についてのまとめ、第六弾です。

今回は、絵本を繰り返し読んであげることが子どもにとってどんな意味を持つのか

紹介したいと思います。



家で読み聞かせをしているお母さんは、子どもが何度も繰り返し読むのをせがむので

うんざりしてきた・・という経験があるかもしれません。

私自身がその一人です。。



しかし、子どもが絵本を繰り返し読みたがるのには

次のような意味があるそうです。



☆知っているものを再確認することで知識を深めたり

絵本の世界をより深く理解することができる




☆読むたびに新しい発見をしている



☆知っている筋を読むことで安心する

小さい子どもは、何かが自分の予想通りになるということに

とても安心し、喜びを感じるそうです。



☆子どもが自分の気持ちを重ねやすいことを表している

繰り返し読む絵本に注目することで、子どもの興味や状態が

わかるかもしれません。



☆絵本の絵で遊んだり、ストーリーをもとに会話をするなど

絵本をただ単に「読む」以上のかかわり方を編み出している


絵本が「遊び」に発展しているからこそ、

飽きることなく繰り返し読む、ということがあるようです。





つまり、絵本を繰り返し読むことは

お母さんにとってはなかなか大変なことだったりするのですが

子どもにとっては心の発達を促し、大きな満足となることであることがわかります。



絵本作家の長谷川摂子氏は、子どもが繰り返し絵本を読むことを

大人が音楽を聴くことに例えています。

大人は絵本はあまり繰り返し読まないけれど、音楽は飽きるまで繰り返し聞きます。

それは、絵本は頭で理解しているのに対し、音楽は身体で感じているからではないかと。

(『絵本が目をさますとき』福音館書店, 2010)

絵本が目をさますとき

子どもは絵本も音楽のように、身体で感じているのですね。

だとするとその子どもの豊かな感性を

そのまま伸ばしてあげたいなぁ、と思うようになりました。



また、子どもにつきあって何度も何度も絵本を読んでいると

10回目、20回目で初めて気づくことが出てきたりします。

ストーリーを理解するのは簡単でも、絵を読むというのは奥が深いなぁ・・と思います。



ストーリーを理解するだけならどんどん数をこなしていけるけれど

本当に大切なのはそうやって一つの作品にじっくり向き合い

自分の解釈を広げていくことなのではないかと思います。



絵本を見る目を養うにはある程度の冊数を読まなければならないでしょうが、

子どもに対しては、冊数を多く読むことより

同じものを繰り返し繰り返し、味わいながら読むことに重点をおきたいと思っています。




















読み聞かせで気を付けること



絵本についてのまとめ、第五弾です。

今回は、家庭で読み聞かせをするときの方法・注意することなどについて紹介します。

まず前提となることは、

おはなし会での読み聞かせと、家庭での読み聞かせは違う

ということです。

おはなし会は、新しい絵本との出会いのきっかけとなったり、

子どもを連れてでかけることでリフレッシュになったりと

いいことがたくさんありますが、おはなし会に連れて行っているから

家で読まなくていいかというとそんなことはありません。

1対1で、大好きなお母さん(もしくはお父さん、ほかの家族、身近な人・・etc)が

時間を割いて読んでくれる、というところに

子どもは愛情を感じ、読み聞かせが心の糧となっていきます。

ここでは、家庭での読み聞かせの方法をご紹介します。


☆感情移入しすぎない


子どもに伝えたいのはあくまで絵本そのものであり、

読み手はその絵本を子どもに伝える仲介者です。

仲介者が大げさに声色を変えたりして読むことは

読み手の解釈を子どもに押し付けることにもなりますし

子どもは読み手の演技が気になって絵本の内容にはいっていけません。

ゆっくり・はっきりと、内容が伝わるように読みましょう。


☆最初から最後まで正確に読む


表紙から見返し、標題紙、裏表紙まで、すべてが絵本の世界を表しています。

すべてをゆっくりと開いて見せてあげましょう。

また、会話やちょっとした言葉をさしはさむのはいいのですが

絵本の言葉は勝手に変えたりせず忠実に読みましょう。

子どもが大きくなってきたら、表紙の作者・画家などの名前を読み上げましょう。



☆質問をしない


読んだあとなどに、質問をしたり感想を聞いたりすると

子どもにとってはプレッシャーになってしまいます。

もし子どもが、作者の意図とは違う読みをしていたとしても

それを訂正したりせず、子どもの自由な解釈にまかせましょう。

むしろ、子どもの発想に驚かされることなどがあって、面白いです。

子どもが感想をいってきたり、会話を求めてきたときはそれに応じましょう。



☆できるだけくっついて


子どもが絵本を読みたいときは、絵本を読みたいのに加えて

お母さんとのスキンシップを求めていることも多いようです。

ひざの上だとお母さんの心音が伝わり、子どもは安心するそうです。



☆子どもの読みたいときに読む


子どもが読んでほしいといってきたときは、

忙しくても家事の手をとめて読んであげられるのが理想ですが

そうもできない場合は、家事の前や寝る前など、

時間を決めておくのもひとつの手です。

「あとで」ではなく、まず最初に読んであげることで

子どもの欲求がみたされるようです。

逆に、子どもが興味を示さないときに無理に読むことは

やめましょう。

さらに、繰り返し読んで!と言われるときは

繰り返しを拒まないで読んであげることが

想像以上にいろいろなよい効果をもたらすようです。

これに関しては次回まとめてみたいと思います。




そして何より一番大切なことは


お母さんも一緒に楽しむ ということです。

そのためにも、子どもへの教育効果などを期待するのではなく

一緒に楽しむ気持ちで、絵本を読めるといいですね★

そのためにも絵本選びがけっこう大事です。

自分のお気に入り、子どもに伝えたい1冊を

見つけていきましょう☆



★このページの内容を書くのに参考にした本の一覧は、下記のページにまとめて紹介しています。

http://flowerkayoko.blogspot.jp/2012/04/blog-post_24.html

また、NPO法人「絵本で子育て」センターの「絵本講師養成講座」のテキストも参考にしました。
















2012年6月10日日曜日

『出版大崩壊』



<内容のまとめ>

☆日本の現況

2010年は下記のような出来事があり「電子書籍元年」といわれた。

・各出版社・印刷会社・取次・書店・新聞社・電気機器メーカーなどが電子書籍事業に参入

・総務省・経産省・文科省が
「デジタル・ネットワーク社会における出版物の利活用の推進に関する懇談会」開催

・シャープ「GALAPAGOS」、ソニー「ソニーリーダー」などの電子書籍専用端末リリース

しかし現状では、携帯向けの漫画コンテンツが大半を占め、

一般的な電子書籍の流通はすすんでいない。


☆アメリカの現況

・2008年に発売されたアマゾン「kindle」がヒット(通信料金をアマゾンが負担)

・2010年、「Google E-books」、コンテンツ300万点をそろえてオープン。

※Google books プロジェクトでは、2009年初めまでに700万冊の大学図書館の蔵書が

電子化されたが、こちらは著作権をめぐり法廷での論争となった。

販売されるのは契約した出版社のもの。


☆ビジネスとしての電子書籍

1996年の最高記録(2兆6563億)以来

出版物売上高は連続で減少し2010年は1兆8748億。

その打開のためもあり、出版関係各社は電子書籍事業に着手せざるをえないが

電子書籍は印刷代・流通経費等が不要となる一方で、開発費等のあらたな費用が経営を圧迫。

著者がアマゾン・アップルなどのプラットフォームと直接契約すれば出版社は不要。

また紙の書籍より廉価でなければ購入が見込めないため、採算をとるのが困難。

そうなると出版社がビジネスにできるのは

音楽・映像等と融合させたリッチコンテンツとしての電子書籍の配信 

しかない。



☆デジタル・コンテンツのたどる道

デジタル化が進めば、音楽等と同様に違法コピー・共有サイトなどが蔓延。

技術的に完全に阻止することは困難。

いまや音楽もゲームも、YoutubeやSNSで無料で利用する時代。

ウェブ上で流通する情報は無料との利用者の認識により

有料のコンテンツをウェブ上で販売し採算をとるのは困難。


☆著作権

・著作物には複数の著作権者が存在し、著作権処理が困難。

「デジタル・コンテンツ利用促進協議会」の提案:

各著作物に著作権者を一人とし、許諾権ではなく報酬請求権を設定

・これまで日本の出版物に関しては契約書のないものも多くあった。

電子化に関してはさらに著作権問題が複雑になるため、出版社では契約書の形式を新たに作成するなどの対応。


☆自費出版

作家志望者の機会は増大するが、成功できるのは一握り。

また作品の増大にともない、プロの作家の作品もそれにうもれていくのでは?

自分にとって必要な作品・価値のある作品に出会うのがより困難になる。



<感想>

電子書籍元年といわれた2010年からの電子書籍に関する動向を概観することができる。

筆者は(日本での)電子書籍には悲観的で、

それは主にビジネスとして成立しないということが理由のようだった。

一利用者として考えれば

端末によって利用可能なコンテンツが左右される現状が解決されてほしい。

紙媒体の本でできていたこと(=どの本屋でもどの本でも買える)が電子書籍ではできないのでは

利用する気になれない。

しかし現状では、各社が競ってそれぞれのサービスを開発していたり

著作権の処理の問題がいっこうに解決されていなかったりして

そんな未来がくるとも思えない・・。

今はただ、書籍を電子化して専用の端末で書籍を読むことが「技術的に」可能になったというレベルなんだろうなぁ。

それがいいことなのかどうかもわからない。

筆者のバックグラウンドからも当然だが、出版社の立場から電子書籍を論じてあるので

図書館とか学術情報流通という視点からすればまた全然違う論点がでてくるだろう。




















2012年6月3日日曜日

子どもの読書関連団体 リンク集

絵本や子どもの読書に関連する団体は多数あります。

関連する団体のウェブサイトから、

イベント情報や機関紙情報、本の検索システムなど

比較的実用的な情報の掲載されているものを中心にまとめてみました。




うちどくホームページ

「家読」(うちどく) とは、全国の学校で多く取り入れられている「朝の読書」に続き

家でも本を読み、家族で読書の習慣を共有しようという取り組みです。

このページでは「うちどくブックガイド」「うちどくノート」をダウンロードできます。



うちどく.com:家読推進プロジェクト

各自治体の読書推進計画へのリンクから、

朝読、家読についての情報まで、かなりの情報量。




絵本学会

刊行物『絵本BOOKEND』、『絵本学』の内容が掲載されています。

リンク集もあります。




特定非営利活動法人 絵本・児童文学研究センター

「大人にとっての児童文化」なるものが本センターのテーマです。」(工藤 左千夫氏)とあるとおり

大人が児童文学を学ぶことを通して子どもの視点を取り戻していくことを目的としているようです。

「児童図書相談士」検定を主催、その他イベントや刊行物の紹介があります。



財団法人大阪国際児童文学館

「日本のこどもの本100選」(日本の児童文学作品の書誌と解題のデータベース)や

「ほんなびキッズ」(子どもの読書を応援するサイト)、

「おはなし会データベース」(開催されたおはなし会や、絵本の検索もできるデータベース)、

「本の海大冒険」(小学生向けの読書ナビゲートサイト)、

「子どもの本いま・むかし」(児童文学作品の画像とテキスト・解題のデータベース)など

独自に作成されたデータベースが多数あります。

『国際児童文学館紀要 』を含む出版物の紹介もあります。



児童図書館研究会

機関紙『こどもの図書館』の内容紹介、イベント情報など。



JPIC 一般財団法人 出版文化産業振興財団

JPIC読書アドバイザー養成講座などの講座情報やイベント情報、

機関紙『『この本読んで!』 の内容など、コンテンツ多数。

子どもに限らない読書推進についての情報が得られる。



公益財団法人 東京子ども図書館

講座情報など多数。機関紙『こどもとしょかん』の紹介もあり



社団法人 読書推進運動協議会

読書カレンダー(読書に関するイベントカレンダー)、機関紙「読書推進運動」の過去1年のバックナンバーなどが見られます。



JBBY - 社団法人 日本国際児童図書評議会 -

『ブックバード 日本語版』(IBBY=国際児童図書評議会の機関紙翻訳版)の紹介や、

イベント情報など。



日本子どもの本研究会

月刊書評誌『子どもの本棚』の紹介や、イベント情報など。



こどもの本 on the Web 日本児童図書出版協会

『月刊 こどもの本』の紹介、“さがしています。こんな本”(テーマ別絵本紹介など)



日本児童文学学会<専門的>

紀要『児童文学研究』の紹介、研究大会情報など



日本児童文学者協会<専門的>

『日本児童文学』の紹介、講座情報など



日本児童文芸家協会

雑誌『児童文芸』の紹介、イベント情報など。出版社や関係団体リンク集あり。



梅花女子大学児童文学絵本センター

センター主催イベント情報のほか、全国の絵本関連イベントカレンダーへのリンクあり。


NPOブックスタート

日本各地や世界での活動状況が報告されている。



財団法人文民教育協会 子どもの文化研究所

研究誌『子どもの文化』および月刊「子どもの文化」の紹介、セミナー情報など



公益財団法人 文字・活字文化推進機構

2010年国民読書年に関する情報など。読書関連リンク集あり。



子どもの読書活動推進ホームページ:文部科学省

関係法令、データ、イベント紹介など。



子ども読書の情報館

文科省作成の、子どもの読書に関する情報の統合サイトのようです。

データや、全国の取り組み紹介のほか、

投稿者からの情報をもとにした本の検索システムもあります。



児童サービス・学校関係者の方へ|国立国会図書館国際子ども図書館

国立国会図書館国際子ども図書館のページ。

子どもの読書に関する調査結果、法令、昨今の動きなど、かなり網羅的にまとめられています。リンク集もあり。





※上記は2012年6月3日現在の情報です。