2020年5月10日日曜日

絵本の読み聞かせと親子関係

絵本の読み聞かせが親子関係に与える影響についての論文を読みました。

佐藤 鮎美. 絵本遊びが親子関係に良い効果をもたらすのは本当か?. ベビーサイエンス. 2016, vol.16, p. 18-27.
https://www.crn.or.jp/LABO/BABY/LEARNED/16/Sato_BabyScience2016.pdf, (参照 2020-05-10).

絵本遊び(という表現が使われていました)がその後の言語発達や就学後の学業成績にいい効果をもたらすことはわかってきているそうですが(*)、親子関係にいい影響を与えることについては科学的検証はほとんどされていないとのことで、本稿ではその科学的検証(↓の2つの実験)が行われていました。
  • 生後9か月の赤ちゃんと母親10組を対象に、①絵本遊び、②おもちゃ遊び、③ツールなし の3種の遊び場面(各10分)をしてもらい、子供の行動に対する母親の働きかけ頻度を比較。
  • 生後9か月のあかちゃんとその母親28組を、①3か月間毎日絵本遊びをするよう指示したグループと②そうでないグループにわけ、生後9か月および生後12か月の時点のおもちゃ遊びの様子(母親からの賞賛の頻度と、子供のほほえみの頻度)を比較。
実験の結果からは、2つのことが導き出されていました。
  • 絵本遊びではほかの遊びより、母親の働きかけが多かった。(回数だけでなく、子供の意にそった働きかけが増えた)
  • 絵本遊びを増やすことによりほかの時間にも行動が変化する可能性が示唆された。(絵本遊びを増やしたことで、おもちゃ遊びの時間にみられる賞賛や子供のほほえみが増えた。ほほえみの増加=子供が普段から親にほめられていることの示唆と考えられるとのこと。)
このことの考察として、
  • 絵本と子供の媒介に親が必要であるからこそ、絵本の読み聞かせの習慣によって、(読み聞かせ以外の場面でも)親が子供を観察し、子供に対して応答的(子供の行動に対して的確・即座に反応する)になる変化がみられたことが考えられる
とのことでした。
母親が応答的であることは、母子関係における「愛着」(=「時間や場所を超えて持続する対人間の感情的なつながり」)の形成に影響すると考えられているそうです。

さらに、結論として書かれていたことが印象的でした。
筆者は、このように、親の応答的な働きかけを増やすという意味では絵本がおもちゃ遊びに勝る可能性があるけれど、それはひとつの側面にすぎないと言っています。
”今回得られた結果は、あくまで「母親の応答性」という一側面に特化した際、絵本遊びが有利か もしれないことを示唆するものである。筆者としては、 日々の生活のなかにはさまざまな遊びがバランスよく混ざっている状態が一番望ましいと考えている。では、本研究のように各遊びの特異性など研究する必要などないかといえば、それもまた否であろう。乳幼児発達の研究者である以上、乳幼児を取り巻く遊びの特性やその効果 を実証的に明らかにし、それを踏まえたうえで、「どの遊びも必要である」ことを発信していく必要がある。”
一母親としては(大学図書館員としても)、こうやって、研究の立ち位置を示してもらえるととてもありがたいなと思いました。

*↓こちらが引用文献として挙げられていました。読んでませんが。。
Wade, B., & Moore, M.:An early start with books:Literacy and mathematical evidence from a longitudinal study. Educational Review 50, 135- 145 (1998).

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