2016年2月25日木曜日

『ちいさなき』と絵本の絵

ちいさなき (幼児絵本ふしぎなたねシリーズ)

おととい娘と読んだ絵本。

描かれているのは草ではなく「小さい木」。
最初赤ちゃんだった「小さい木」が、少しずつ成長して、お母さんに少し近づいたことを自慢げにお話しする場面は、
2-3歳の子どもの気持ちそのものをあらわしているなと思った。

娘が1歳のころに買って、最初は興味を示さなかったのだが、毎日散歩に出るようになってこの絵本を喜んで見るようになったことを思い出す。

こういう写実的な絵は、子どもにとって、現実のもののイメージを呼び起こしやすいはず。
カラフルでかわいい絵がいいわけではない、ということは、松居直さん著の『絵本・物語るよろこび』や中村征子さん著の『絵本の本』)にも書かれている。(※)

また渡辺茂男さんも、子どものイメージを呼び起こしやすい絵について、たとえば車なら1台より、数台の絵のほうが現実で見る姿に近く、イメージを呼び起こしやすいと書いている。(『絵本の与え方 (エディター叢書 18)』)

絵の「本物らしさ」は、確実な、絵本選びの基準のひとつだと思う。


※私自身は、絵本の絵を鑑賞して「かわいい~」「きれい~」と心が動かされることも(特に大人には)絵本の楽しみ方のひとつだと思う。
でも子どもにとって絵本が「かわいい」だけで終わるとしたらもったいない。感動したり、不思議に思ったり、勇気づけられたり、わくわくしたり、幅広い楽しみ方をしてほしい。

2016年2月23日火曜日

『りんごのき』と絵本選び

昨晩娘と読んだ本は、「りんごのき」
りんごのき (世界傑作絵本シリーズ―チェコの絵本)

この本は表紙のピンクに惹かれ手に取り、なつかしの海文堂書店で買ったんだったな・・と思い出す。

この絵本は正方形だし(?)絵もかわいらしく、いっけん小さい子向きという感じがして自分もそう思って買ったのだけど、実はもう少し大きい子向けかなと今では思う。

よく絵本を読むのに適した年齢が絵本の裏に書いてあるけど、基本的にはその子次第だと思う。
本人の興味の対象や、これまでに読んだ絵本の量や種類などによって、その絵本を楽しめるかが変わってくるはず。

この「りんごのき」があんまり小さい子向けではないか・・?と思う理由には、扱う時間が長いということがある。

絵本は基本的に、絵と絵の間を頭で思い浮かべることで描かれているストーリーが楽しめるもの。

なので、扱う時間が長いと、絵と絵の間で経過する時間が長く、小さい子の頭の中でその間を思い浮かべるのはむずかしいかなと思う。

もちろんページに書かれていることそのものを楽しむだけでも豊かなものがあると思うけれど、「絵と絵の間をいかに想像できるか?」が最近は自分の絵本選びの基準のひとつになっていて、またその子に適した絵本は、絵と絵の間をどれだけ思い浮かべられるかによって変わるのかなと思う。

それを思うと、普段いろんな経験をしていてこそ、絵本の楽しみも広がる(逆もしかり)ということがよくわかる。

2015年10月4日日曜日

『絵本の本』中村柾子

著者 : 中村柾子
福音館書店
発売日 : 2009-07-01

長い間保育士として絵本を子どもと読んできた筆者の体験談に基づく絵本論にはとても説得力がある。

保育園では、絵本が子どもの興味・疑問をひきおこして、その後子ども同士で話し合ったり、実際に確認したり、遊びに発展したりということがたくさんあったようだ。

絵本は、単に文字や知識を覚えさせる以上に、子どもに本質的な変化をおこさせるものだということがわかる。

その変化は、即座に・直接的に起こるものではないので説明は難しいけど、説明できないから関連がないわけではない・・というくだりに納得。

確かに絵本の影響を科学的に証明するのは難しい。
でも多くの人が、絵本の力・よさを実感していることは事実。私もとても実感している。
その実感(経験)をもつ人がその可能性を信じて発していくことこそ重要なのかな、と改めて思えた。

またこの絵本では、創作の物語絵本のほか、科学絵本や昔話絵本についても、子どもにとってどんな意味があるか、掘り下げて説明されている。

一方、かわいいだけの絵本、想像する余地が残されていない絵本、昔話で残酷な場面を省略してしまっている絵本、大人の好みで作られている絵本などには疑問が呈されていて、深くうなずきながら読んだ。

とはいっても著者も、古典ばかりにたよるのではなく、新しい絵本を大人が積極的にみとめていくこともすすめており、絵本選びは一筋縄ではいかないことがわかる。

子どもに変化をもたらすような絵本との出会いを数多く準備できるよう、大人の試行錯誤が要るなぁ。















2015年8月23日日曜日

『絵本をよんでみる 』五味太郎著


絵本をよんでみる (平凡社ライブラリー)
絵本をよんでみる (平凡社ライブラリー)

この本はすごい。
久々に、次々読みたい、でも読んでしまうのがもったいない、と思う本に出会いました。

13冊の絵本を、五味太郎さんが、小野明さんという方と対談形式で深く「よんでみて」いる本です。
絵本の描かれていない部分をよむ、というのは、みんな多少はやっていることと思いますが、そのよみが深すぎて深すぎて、全身・全力でぶつかっている感じです。
登場人物の来し方、人生、普段の過ごし方(笑)、職業、関係性、本音…などが、五味さんのフィルターを通して考察されていています。

特に、アーノルド・ローベルの『ふたりはいっしょ』がまくんとかえるくんと、同じくローベルの『ふくろうくん』の考察にはうならされるとともに、笑いました。

がまくんとかえるくんは老人もしくは子ども、二人は友情ごっこをしている?というネタや、ふくろうくんは読者の視点を意識したうえでの行動をとっている?など・・

他の絵本にも同様に、深くメスがいれられているので、ぜひいろんな人に読んでみてほしい本です。

絵本も本も、どう読むかは読む人のもつ厚み・深み次第なんだなあ…と思わされました。
絵本の感想、というより、絵本を引き金にした五味さんの思索・哲学が書かれているような感じです。

2015年6月7日日曜日

ワーママが勇気づけられる本


最近、ワーママ向けの本を2冊、再読してみた。
ひとつはこちらで、夫の協力仰ぐべく悩んでいた時期に買った本。


著者の小室さんの、家事の分担やタイムスケジュールが書いてあり、「これだけ手伝ってもらっていいのか!」と過去に勇気づけられた覚えがある。

また小室さんは、独身時代も振り返りつつ、仕事一辺倒の生活より、生活も充実ることをすすめている。
たとえば残業をするより恋人や友人とあう、新しい場所に行ってみるほうが新たな視点・発見がうまれて、仕事もはかどる、と。

子どもがいても、仕事以外になにかボランティアなり、活動をすることも、すすめている。それはそれぞれの活動がそれぞれのフィールドでのアイディアの素になったり、人との出会いがひろがったりするから。

また仕事では、人にまかせることで人を育てるべしとのこと。
仕事に時間がかかるタイプの人は、なんでも自分でしようとしすぎで、人にまかせることで、自分はまた別のことにも挑戦できると。

やりたいことをあきらめたくない人を後押ししてくれる本です。


もうひとつは、もう少しシビアな本。


博報堂の「リーママプロジェクト」をもとにした本で、はたらくママ社員さんたちの生の声がつまっている。

それによると、仕事と育児の両立=ワークもライフも100点満点というのは幻想だと。
確かにそうで、専業主婦だからこそできるようなきめ細やかな子育てをしながら、男性社員と肩を並べて仕事もしようなんて不可能に決まっている。

でも、そこであきらめるのではなく、自分の大切なものを見極めながら、少しずつ現状を打開することが大事、と。
結局もがくしかないのかもしれないけど、その声をあげなければ現状は変わらないというメッセージと受け取った。

掃除を少々していないとか、そんなことはどうでもいい、夕食は納豆ごはんでもいいと。(笑)
苦しみながらもそれを笑い飛ばす強い母親たちの姿に勇気づけられる本です。

正解なんてないけど、時々こういう本を読んで考えたり、勇気づけられています。











2015年5月15日金曜日

絵本講師養成講座の修了生勉強会

先日(5/9)、絵本講師養成講座修了生の勉強会にいってきました。

絵本講師の方お二人の講座をきいた後、専任講師のお話、そしてグループディスカッションでした。

講座をされたうち一人の方は、現役大学生(!)で、お仲間の大学生に普段講座をされているとのこと。
お母さん・お父さんになりたい学生さんたちに、子育てにおけるアタッチメントの重要性、そのために絵本をよむことの大事さなどを伝えていらっしゃるそうです。
お若いのにすでに実践にうつされているところがすごいなぁと思いました。

もう一人の方は東京で普段活動され、色彩心理学のようなものを学ばれたことから、そのこととからめた絵本講座をされているとのことでした。
そこで紹介された下記の絵本がとっても気に入りました。


絵本講座はそれぞれの方の個性がでるのがいいところだなと思いました。
同じ講座を学んでも、こんなにいろんな講座が結果としてうまれるというのはなかなか面白いと思います。

自分はなかなか、自分の意見を主張するのが得意でないのですが、その日の専任講師のお話で「自分の意見を持つことが大事、それは他人と違うかもしれないがそれはそれでかまわない」ということをおっしゃっていて確かにと思いました。

自分の意見を主張することは他人の意見も受け入れることに実はつながるんかなと思いました。

2015年4月28日火曜日

『子どもと本』



子どもと本 をつなぐのは人である というのがこの本の端的なメッセージと感じました。

筆者が司書教育をうけ、また実践もつんだ米国の事例が多く紹介され、図書館員の専門性(を保障する制度設計)という意味での日本の遅れが浮き彫りになっていました。

たとえばアメリカで筆者が実践していた選書方法を見ても、いかに蔵書の一冊が、ある意味社会の資産としての重みのもと選ばれているかがわかります。本は少なくとも二人の図書館員が読んだ上で、各種専門的な評価項目も鑑み、全体の蔵書とのバランスを考慮して選ばれる、さらに決まらない場合には常連の子どもに意見をもとめることもあるとは驚きでした。

そのような図書館員の眼が、児童書出版のレベルを高める機能を果たしてきたというのも、図書館員の社会における重要性を示していると思いました。

日本においても、公共図書館の不足を補完してきた文庫活動の先鞭をきられた石井桃子さん・土屋滋子さん・村岡花子さんや、明治時代に山口県立図書館で児童向けサービスの実現に尽力された佐野友三郎さんなど、素晴らしい方々が紹介されていましたが、その方々の意思が社会で認知され制度化されるにいたっていないのは筆者の指摘の通り残念なことです。

その他、昔話についての理解に役立つ専門的な知識も紹介されています。専門的に分析しすぎるがゆえに楽しむのを忘れないよう意識も倣いたいと思いました。

全体に、母親としてだけでなく、大学図書館員の自分にとっても学ぶことの多い本でした。