2019年3月30日土曜日

絵本の美術館、絵本と美術館

この本を読みました。
ぼくが安曇野ちひろ美術館を作ったわけ』松本猛著、講談社、2002

安曇野ちひろ美術館とは、世界で初めての絵本美術館として東京にちひろ美術館ができた20年後に新たに設立された、もうひとつのちひろ美術館です。 ※ちひろ美術館
この本は、美術館の視点から絵本についても考えるきっかけをくれるとても面白い1冊でした。

東京のちひろ美術館をつくられた際は、絵本の原画が芸術的な価値を認められていなかった状況の打開という動機が大きかったようですが、安曇野という自然の豊かな土地で新たな美術館をつくったときには、美術館で絵を見ることをもっと楽しめるようにという強い思いがあったようです。本では次のようなことが書かれていました。

  • 絵を見るとはそもそもどういうことか
  • 絵本の歴史
  • めざした美術館像・こだわり

絵を見るとはどういうことか?については、
  • 知識を得たり勉強するためだけではなく(狭義の勉強ということですが)、心地よい気分になるために見る
  • 自分が好きな、繰り返し見たい1枚、手元におきたい1枚と出会うために見る。
  • 絵の背景にある知識を知ることは絵を楽しむことを補足もするけど、それで絵を知ったことにしてはもったいなく、絵を見て何を感じるかを大事にする。

といったことが書かれていて、絵本についてもほとんど同じことがいえるだろうなぁと、最近の自分の中のもやもやが言語化された感じがしました。絵本も、数ある中から自分の好きなものを探すのが楽しい。

また、絵本の歴史というと、子どものための絵本の歴史(『世界図絵』など)から話が始まることもありますが、この本では『死者の書』から宗教画、日本の絵巻物等、子供向けに限らず人は長い間絵を物語とセットで書いてきていることが紹介されていて、物語と切り離されたファインアートの歴史は肖像画をのぞいてはまだほんの200年くらいだということです。
そう考えると絵本が大人も楽しませるものであることがとても腑に落ちました。

そういった考えに基づいてつくられた絵本美術館は、何より子どもも大人もゆったりリラックスして絵や絵本を楽しめる空間をめざして、家具や建物、カフェの飲食物まで、たくさんのこだわりのもとにつくられているようです。周りにはたくさんの自然があり、いつか行ってみたいなぁと思いました。

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