2015年2月27日金曜日

図書館でのカビ対策について(2)


以前に基礎的なことを調べたのですが、もう少し具体的な情報をいくつかさがしました。

■原因調査について

カビの再発を防ぐため、原因調査をした記録がありました。(1)

  • データロガー設置で温湿度調査
  • 送風状況確認(ポリプロピレンのひもを書架にはりつけ・デジタル風速計)
  • コンタクトプレートで除湿機がカビの発生源になっていないか確認
  • RCSサンプラーで書架・床のカビを調査
  • レーザー粉塵計、Air-O-cellサンプラーで書庫内の粉塵を調査

■予防・環境改善

  • 除湿機設置
  • 床や窓などのカビ発生状態も確認したうえで、除去・清掃
  • 扇風機などを使用し送風、湿気だまりをなくす
  • 空調が外気をとりこむタイプなら雨の日は運転を抑える
  • 窓を発泡スチロールで閉鎖
  • 清掃の委託(の検討)

■はえた場合の除去について

  • HEPAフィルター・ULPAフィルターつきの掃除機で吸い取る
  • 70-80%の消毒用エタノールで、キムワイプ等でふき取る
  • この際、いったん資料はすべて除けて棚板もふきとることが重要
  • 専門業者に対策を相談すること

東京文化財研究所では、作業の際、下3段のみと優先順位をつけて作業されたそうです。(1)
また、文部科学省図書館では、除去作業の前にまず、不要と思われる資料2000冊を選別し廃棄されたそうです。(2)
カビの除去作業といっても日ごろの通常業務の合間に行うため、いかに効率的に(再発を防ぐことも含め)対策をとることができるかが重要だと思いました。


<参考
(1)佐野千絵ほか. 図書資料のカビ対策:三康図書館の事例. 保存科学. 2002, 42, p. 87-100.
http://www.tobunken.go.jp/~ccr/pdf/42/pdf/04210.pdf

(2)松家久美. 特集, 大切な資料を守れ!-資料保存: 利用のための資料保存~カビ除去作業の外注について~. びぶろす. 2014, 66.
http://www.ndl.go.jp/jp/publication/biblos/2014/10/02.html

(3)伊藤もも. 特集, 大切な資料を守れ!-資料保存: カビ発生後の当館での書庫管理について. びぶろす. 2014, 66.
http://www.ndl.go.jp/jp/publication/biblos/2014/10/03.html

資料の参照日は2015.2.21です。

2015年2月13日金曜日

スタンダードブックストアのイベントにいきました



2月10日(火)に下記のイベントに行きました。

『本で人をつなぐ まちライブラリーのつくりかた』刊行記念 礒井純充トークショー

本で人をつなぐ まちライブラリーのつくりかた
本で人をつなぐ まちライブラリーのつくりかた

まちライブラリーは名前や概要を見聞きしてはいたのですが、ちゃんと情報を得たことがなかったのと、この本屋さんに前から行ってみたかったので参加しました。

内容は、まちライブラリー提唱者の磯井さんをはじめとする四名の方のトークショーで、まちライブラリー発足までの経緯とともに、その裏にあるみなさんの思いを聴くことができました。

印象的だったのは、みなさんの、「オモロイ」を原動力にそれを実行に移すエネルギーでした。

まちライブラリーとは何ぞやということはむしろわかりませんでしたが、決まった様式はないこと、そして共通項は本を介して人がつながる「オモロイ」場所、ということがわかりました。

また本は、本を選ぶとか本の感想をいうという行為で「表現したい」という人の欲を昇華させてくれるもの、そしてまちライブラリーはそれを体現する場所であるという磯井さんのお話には納得させられました。

本を楽しむ、人とつながることを楽しむ、そういうことを大事にすることは従来やってきたことに加えて大学図書館でも取り入れていけるといいなと思いました。

また、イベント開催にあたりむやみに人を集めない(!)、それよりコンセプトをはっきりして続けて、本当にきたい人を待つ、というお話には勇気づけられました。

いろいろなまちライブラリーをぽつぽつ尋ねてみたいなと思います。


2015年2月9日月曜日

『こねこのハリー』

こねこのハリー (世界傑作絵本シリーズ)
こねこのハリー (世界傑作絵本シリーズ)

ひさびさに「これは!」と思った絵本です。図書館で出会って、即、てもとにほしくなりました。
てのひらにすっぽりおさまるサイズ、絵のやさしいタッチ、開く前からかわいさがあふれ出ているのですが、それだけではなくお話もまた絶妙です。

このこねこの何気ない言動本当にリアルで純粋でかわいくて、でもそれをあくまでフラットに描いているというか、甘さが抑えられていてそれが絶妙です!

他にも同じシリーズで3冊でていて、お話はどれもそのような子どもらしさ、かわいさにあふれていました。

まっててね ハリー (世界傑作絵本シリーズ)
まっててね ハリー (世界傑作絵本シリーズ)

ハリー びょういんにいく (世界傑作絵本シリーズ)
ハリー びょういんにいく (世界傑作絵本シリーズ)

ハリーのクリスマス (世界傑作絵本シリーズ)
ハリーのクリスマス (世界傑作絵本シリーズ)

大人が、子どものかわいさを再認識できて優しい気持ちになれる、すごく素敵な絵本だと思います。
子どもにとっては、どうかな?少し大きい子なら、共感できるかな~。

2015年1月27日火曜日

『あれこれたまご』『ごろごろにゃーん』


あれこれたまご (かがくのとも傑作集―わくわく・にんげん)
あれこれたまご (かがくのとも傑作集―わくわく・にんげん)

たまごがスーパーで売られるところから、いろいろなお料理に返信するまでが、関西弁&子ども目線でいきいきと描かれているおもしろい絵本です。

子どもってやっぱりお料理・食べる関係は大好きです。
娘も、おばあちゃんの家で食べた茶碗蒸しがまた食べたいなぁ、と思い出していました。
私もこれを読んで、たまごっていろんな食感に変身するなぁとあらためて思いました。

ごろごろにゃーん (こどものとも傑作集)
ごろごろにゃーん (こどものとも傑作集)

絵のもつ不思議な雰囲気に脱力&少し吹き出してしまいます。

言葉は毎ページ全部一緒です。
娘は「ことばが全部いっしょだね。つまんない」と言っていましたが・・
その後絵をみて感想を言ったりもしていたので、多少は絵を見て楽しんだのでしょうか。

意味があるのかないのかわからない不思議な絵がつらなっていて深読みしてしまいます。結局あまり意味は分かりませんが。


そういえば先日、休日に遊び代わりに(?)、家の絵本をタイトル順にならべてみたところ、娘は夢中で一緒にやってくれました。
きれいに並べると、忘れてた絵本も奥からでてきたりして、久々に読むものも手にとれそうです。

2015年1月21日水曜日

『おちゃのじかんにきたとら』


おちゃのじかんにきたとら
おちゃのじかんにきたとら

まさにタイトルどおりの内容。
お茶の時間にやってきたとらが、家じゅうの食べ物・飲み物を平らげてしまう。

教訓めいたものなどがないのがよい。とらの豪快なたべっぷりや、とらによりそう女の子のうっとり感、起きたことをそのまま受け入れてる感じなどが楽しい。
すごくリアルというわけでもないけど動きの感じられる絵。

娘も、食べつくしてしまうとらに、驚いたり喜んだりしていた。

先日、エメラルドブックスとハニカムブックスをはしごして、入手したうちの1冊。娘はすごく気に入った模様。

絵本選びは、子供と一緒に買いに行くとどうしてもうまく決まらないので、自分一人でいくのがいいかなと思う。
子どもに読んであげて判断する、というのが理想なのかもしれないけど、一緒に行くと娘がほしいものと私がほしいものが違い、もめる。。
子どもがほしいものも尊重してあげたいけど、普段の感じからすると一時的な気持ちでいってる感じもするので。

いつも結構私にくっついて離れない娘だけど、私が一人で外出後帰宅して3冊絵本を読んであげたら満足して去って行っていた。絵本を読んであげたときの満足感はやっぱり他にないものかな?と思うことが多い。

2015年1月19日月曜日

『いたずらきかんしゃちゅうちゅう』『かさじぞう』

いたずらきかんしゃちゅうちゅう (世界傑作絵本シリーズ―アメリカの絵本)
いたずらきかんしゃちゅうちゅう (世界傑作絵本シリーズ―アメリカの絵本)

機関車のちゅうちゅうが、ちょっとしたいたずら心をおこして大騒ぎとなるお話。
ちゅうちゅう疾走中の、ちゅうちゅう&周囲の躍動感がすごい。

大きい街と小さい街をいったりきたりする間に変化する風景の描写に当時の生活を感じられる。
またなんといっても、ちゅうちゅうのいたずらに怒る町の人とはうらはらに、心配をして本気で助けにいく大人たちの存在がとてもほほえましかった。(ふつうだと怒られる気もするけど、)最後までちゅうちゅうは怒られることなく、無事でよかったなぁと迎えられるのは子どもには安心の結末かなと思いました。

『絵本とは何か』でも例示されていたとおり、カラフルでなくても(絵はモノトーン)、線と構図により物語のイメージをふくらましている絵本というのが納得できました。

見返しをみたとたん、娘が「はやーい」といったのが面白かったです。


かさじぞう(こどものとも絵本)
かさじぞう(こどものとも絵本)

昔話の再話でも適当に省略されていない作品として『絵本とは何か』で例示されていたので読んでみました。
扇にかたどった画面構成といい、絵のタッチといい、物語の雰囲気とよくあっています。
絵が平面的なのがまた日本的な味が出ていると思いました。

横で聞いていた夫は「この当時から資本主義やったんやな」という珍しい感想をもっていましたが。
その表現はともかく、確かにかさをつくって売れず、そうすると年越しのおもちもないというような生活の様子は、今の子供には信じられないだろうなと思います。

言葉のひびきも面白くて娘は喜んでいるようでした。

2015年1月18日日曜日

『絵本とは何か』

絵本とは何か (エディター叢書 6)
絵本とは何か (エディター叢書 6)


絵本について考えるのに大変示唆に富んだ本です。
著者の松居直さんは、日本で初めてオリジナル創作物語絵本を本格的に出版された編集者の方です。(それまでは子ども用の絵雑誌、昔話のダイジェスト、少数の海外からの翻訳絵本、などが主に流通していたようです)


その福音館書店発行の月刊「こどものとも」シリーズがもととなって単行本として発行された絵本の中には、今もロングセラーとなって親しまれているものが多くあります。
★こどものとも復刻版


この本ではその編集の経験をもとに、子どもの反応だけではなく、芸術・文学・教育・・など様々な視点による絵本のみかたが書かれており勉強になりました。
特に強調されていたのが、絵本を子どもに読むことが、書き言葉ではなく、耳で聞く豊かな言葉の体験となる、ということでした。
絵本は本への架け橋であるとか、読むことへのスタートであるという考えが(自分が賛成かは別として)どうしてもあったので、新たな視点となりました。


また、絵本の絵や言葉に関しても深い洞察があり、絵本は物語をあらわすものである、だから物語の世界をうまく形作っている絵本こそよい絵本だということです。
似たようなフレーズはよく見聞きするものの、この本では具体例が豊富でだいぶ理解が深まりました。


まずはおもしろい物語があり、絵はその物語の世界をうまく再現できる場面を切り取って描いているかという点が大事だそうです。
そうすると絵本によっては、絵が先にあってその連続で表層的に物語を作っているというか、絵と絵の間に思い浮かぶ事柄が少ないような気もしてきました。


絵本を評価・批評する目を持つことは、自分の中で否定的な見方が大きくなるようで、その是非はいまだに自分ではわからないまま勉強を続けています。
でも、こうしたしっかりした選択眼のもと出版された多くの絵本が子供たちを楽しませていたり育児を支えてくれていることを思うと、大人がしっかりした批評・選択の目を持つこともやはり大事なのかなと思います。


そのあたりに関して自分の考えはゆれていますが・・。
できるだけいろいろな考えにふれたうえで自分の考えをかためていきたいと思います。