2015年4月28日火曜日
『子どもと本』
子どもと本 をつなぐのは人である というのがこの本の端的なメッセージと感じました。
筆者が司書教育をうけ、また実践もつんだ米国の事例が多く紹介され、図書館員の専門性(を保障する制度設計)という意味での日本の遅れが浮き彫りになっていました。
たとえばアメリカで筆者が実践していた選書方法を見ても、いかに蔵書の一冊が、ある意味社会の資産としての重みのもと選ばれているかがわかります。本は少なくとも二人の図書館員が読んだ上で、各種専門的な評価項目も鑑み、全体の蔵書とのバランスを考慮して選ばれる、さらに決まらない場合には常連の子どもに意見をもとめることもあるとは驚きでした。
そのような図書館員の眼が、児童書出版のレベルを高める機能を果たしてきたというのも、図書館員の社会における重要性を示していると思いました。
日本においても、公共図書館の不足を補完してきた文庫活動の先鞭をきられた石井桃子さん・土屋滋子さん・村岡花子さんや、明治時代に山口県立図書館で児童向けサービスの実現に尽力された佐野友三郎さんなど、素晴らしい方々が紹介されていましたが、その方々の意思が社会で認知され制度化されるにいたっていないのは筆者の指摘の通り残念なことです。
その他、昔話についての理解に役立つ専門的な知識も紹介されています。専門的に分析しすぎるがゆえに楽しむのを忘れないよう意識も倣いたいと思いました。
全体に、母親としてだけでなく、大学図書館員の自分にとっても学ぶことの多い本でした。
2015年3月16日月曜日
『あなのはなし』
あなのはなし
本屋さんで偶然みつけました。
絵がちょこっと漫画チック?と思ったけど、チェコの昔話ってところと、訳者の方がまさきるりこさんだったので、買ってみる。
読み始め、お話がきゅうにはじまってひきこまれる。
なんといってもこのお話の主人公は「あな」。
靴下にあいたあながどんどん大きくなって独立してしまうなんて意味深い・・と思いながら読み進めてしまう。
お話は、あなが同行の仲間を見つける展開の繰り返しを経て、最後にはおおかみと「あな」が対峙する。
このおおかみ、最初からところどころであなたちを狙っている。
実際にあながあいているところはおまけみたいなもので、お話の面白さにひきつけられる1冊でした。
本屋さんで偶然みつけました。
絵がちょこっと漫画チック?と思ったけど、チェコの昔話ってところと、訳者の方がまさきるりこさんだったので、買ってみる。
読み始め、お話がきゅうにはじまってひきこまれる。
なんといってもこのお話の主人公は「あな」。
靴下にあいたあながどんどん大きくなって独立してしまうなんて意味深い・・と思いながら読み進めてしまう。
お話は、あなが同行の仲間を見つける展開の繰り返しを経て、最後にはおおかみと「あな」が対峙する。
このおおかみ、最初からところどころであなたちを狙っている。
実際にあながあいているところはおまけみたいなもので、お話の面白さにひきつけられる1冊でした。
2015年3月8日日曜日
絵本を4年よんだら
最近になって絵本を本当に楽しめるようになった気がする。
今までも、きれいな絵や好きな絵にうっとりしたり、言葉のリズムやきれいさに浸ったり、ストーリーを楽しんだり感動したり、、楽しんではいた。
でも最近、絵本を読むということは、絵本に描かれていない部分をいかに思い浮かべるかなんだな・・ということがかなり実感されるようになった。
そのたぐいのことがいろんな本に書いてあったと思うのだけど、自分自身がそういう読み方をできていなかったんだと思う。
そのときは、「絵」「言葉」「物語(の筋)」は別々に存在していた。
先日ひさしぶりに、『しろくままちゃんのほっとけーき』をよんだら、以前と感じるものがぜんぜんちがった・・。
しろくまちゃん何回もエプロンかえたんだなとか、表紙に描かれてるたくさんのほっとけーきのうち半分ほどはどこにいったんだろうとか、しろくまちゃんがひとりでボールをかき混ぜてる間おかあさんはどこいったんだろう?フライパンあっためてるのかな?とか。
子どもが好きな絵本は何度も何度も読む、という感覚も最近わかってきた。自分も、何度も読みたい、何度もその世界にいきたいと思う絵本に最近よく出会うようになった。
こうなってみると、絵本を読むというのがいかに奥が深いかわかるし、子どもは絵本を楽しむ素質を持っていて、でもそれを伸ばすかどうかは周りの大人しだいということがわかる。読み手の頭の中にイメージがあるかどうかで、子どもに伝わるものが全然違うと松居直さんが本に書かれていた。(『絵本とは何か』)
子どものとき、絵本でイメージの世界をひろげる経験がなかったら、字だけの本でイメージをひろげる段階にすすむことは難しいだろうなぁ。
2015年2月27日金曜日
図書館でのカビ対策について(2)
以前に基礎的なことを調べたのですが、もう少し具体的な情報をいくつかさがしました。
■原因調査について
カビの再発を防ぐため、原因調査をした記録がありました。(1)
- データロガー設置で温湿度調査
- 送風状況確認(ポリプロピレンのひもを書架にはりつけ・デジタル風速計)
- コンタクトプレートで除湿機がカビの発生源になっていないか確認
- RCSサンプラーで書架・床のカビを調査
- レーザー粉塵計、Air-O-cellサンプラーで書庫内の粉塵を調査
■予防・環境改善
- 除湿機設置
- 床や窓などのカビ発生状態も確認したうえで、除去・清掃
- 扇風機などを使用し送風、湿気だまりをなくす
- 空調が外気をとりこむタイプなら雨の日は運転を抑える
- 窓を発泡スチロールで閉鎖
- 清掃の委託(の検討)
■はえた場合の除去について
- HEPAフィルター・ULPAフィルターつきの掃除機で吸い取る
- 70-80%の消毒用エタノールで、キムワイプ等でふき取る
- この際、いったん資料はすべて除けて棚板もふきとることが重要
- 専門業者に対策を相談すること
東京文化財研究所では、作業の際、下3段のみと優先順位をつけて作業されたそうです。(1)
また、文部科学省図書館では、除去作業の前にまず、不要と思われる資料2000冊を選別し廃棄されたそうです。(2)
カビの除去作業といっても日ごろの通常業務の合間に行うため、いかに効率的に(再発を防ぐことも含め)対策をとることができるかが重要だと思いました。
<参考
(1)佐野千絵ほか. 図書資料のカビ対策:三康図書館の事例. 保存科学. 2002, 42, p. 87-100.
http://www.tobunken.go.jp/~ccr/pdf/42/pdf/04210.pdf
(2)松家久美. 特集, 大切な資料を守れ!-資料保存: 利用のための資料保存~カビ除去作業の外注について~. びぶろす. 2014, 66.
http://www.ndl.go.jp/jp/publication/biblos/2014/10/02.html
(3)伊藤もも. 特集, 大切な資料を守れ!-資料保存: カビ発生後の当館での書庫管理について. びぶろす. 2014, 66.
http://www.ndl.go.jp/jp/publication/biblos/2014/10/03.html
資料の参照日は2015.2.21です。
2015年2月13日金曜日
スタンダードブックストアのイベントにいきました
2月10日(火)に下記のイベントに行きました。
『本で人をつなぐ まちライブラリーのつくりかた』刊行記念 礒井純充トークショー
本で人をつなぐ まちライブラリーのつくりかた
まちライブラリーは名前や概要を見聞きしてはいたのですが、ちゃんと情報を得たことがなかったのと、この本屋さんに前から行ってみたかったので参加しました。
内容は、まちライブラリー提唱者の磯井さんをはじめとする四名の方のトークショーで、まちライブラリー発足までの経緯とともに、その裏にあるみなさんの思いを聴くことができました。
印象的だったのは、みなさんの、「オモロイ」を原動力にそれを実行に移すエネルギーでした。
まちライブラリーとは何ぞやということはむしろわかりませんでしたが、決まった様式はないこと、そして共通項は本を介して人がつながる「オモロイ」場所、ということがわかりました。
また本は、本を選ぶとか本の感想をいうという行為で「表現したい」という人の欲を昇華させてくれるもの、そしてまちライブラリーはそれを体現する場所であるという磯井さんのお話には納得させられました。
本を楽しむ、人とつながることを楽しむ、そういうことを大事にすることは従来やってきたことに加えて大学図書館でも取り入れていけるといいなと思いました。
また、イベント開催にあたりむやみに人を集めない(!)、それよりコンセプトをはっきりして続けて、本当にきたい人を待つ、というお話には勇気づけられました。
いろいろなまちライブラリーをぽつぽつ尋ねてみたいなと思います。
2015年2月9日月曜日
『こねこのハリー』
こねこのハリー (世界傑作絵本シリーズ)
ひさびさに「これは!」と思った絵本です。図書館で出会って、即、てもとにほしくなりました。
てのひらにすっぽりおさまるサイズ、絵のやさしいタッチ、開く前からかわいさがあふれ出ているのですが、それだけではなくお話もまた絶妙です。
このこねこの何気ない言動本当にリアルで純粋でかわいくて、でもそれをあくまでフラットに描いているというか、甘さが抑えられていてそれが絶妙です!
他にも同じシリーズで3冊でていて、お話はどれもそのような子どもらしさ、かわいさにあふれていました。
まっててね ハリー (世界傑作絵本シリーズ)
ハリー びょういんにいく (世界傑作絵本シリーズ)
ハリーのクリスマス (世界傑作絵本シリーズ)
大人が、子どものかわいさを再認識できて優しい気持ちになれる、すごく素敵な絵本だと思います。
子どもにとっては、どうかな?少し大きい子なら、共感できるかな~。
ひさびさに「これは!」と思った絵本です。図書館で出会って、即、てもとにほしくなりました。
てのひらにすっぽりおさまるサイズ、絵のやさしいタッチ、開く前からかわいさがあふれ出ているのですが、それだけではなくお話もまた絶妙です。
このこねこの何気ない言動本当にリアルで純粋でかわいくて、でもそれをあくまでフラットに描いているというか、甘さが抑えられていてそれが絶妙です!
他にも同じシリーズで3冊でていて、お話はどれもそのような子どもらしさ、かわいさにあふれていました。
まっててね ハリー (世界傑作絵本シリーズ)
ハリー びょういんにいく (世界傑作絵本シリーズ)
ハリーのクリスマス (世界傑作絵本シリーズ)
大人が、子どものかわいさを再認識できて優しい気持ちになれる、すごく素敵な絵本だと思います。
子どもにとっては、どうかな?少し大きい子なら、共感できるかな~。
2015年1月27日火曜日
『あれこれたまご』『ごろごろにゃーん』
あれこれたまご (かがくのとも傑作集―わくわく・にんげん)
たまごがスーパーで売られるところから、いろいろなお料理に返信するまでが、関西弁&子ども目線でいきいきと描かれているおもしろい絵本です。
子どもってやっぱりお料理・食べる関係は大好きです。
娘も、おばあちゃんの家で食べた茶碗蒸しがまた食べたいなぁ、と思い出していました。
私もこれを読んで、たまごっていろんな食感に変身するなぁとあらためて思いました。
ごろごろにゃーん (こどものとも傑作集)
絵のもつ不思議な雰囲気に脱力&少し吹き出してしまいます。
言葉は毎ページ全部一緒です。
娘は「ことばが全部いっしょだね。つまんない」と言っていましたが・・
その後絵をみて感想を言ったりもしていたので、多少は絵を見て楽しんだのでしょうか。
意味があるのかないのかわからない不思議な絵がつらなっていて深読みしてしまいます。結局あまり意味は分かりませんが。
そういえば先日、休日に遊び代わりに(?)、家の絵本をタイトル順にならべてみたところ、娘は夢中で一緒にやってくれました。
きれいに並べると、忘れてた絵本も奥からでてきたりして、久々に読むものも手にとれそうです。
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