2015年10月4日日曜日

『絵本の本』中村柾子

著者 : 中村柾子
福音館書店
発売日 : 2009-07-01

長い間保育士として絵本を子どもと読んできた筆者の体験談に基づく絵本論にはとても説得力がある。

保育園では、絵本が子どもの興味・疑問をひきおこして、その後子ども同士で話し合ったり、実際に確認したり、遊びに発展したりということがたくさんあったようだ。

絵本は、単に文字や知識を覚えさせる以上に、子どもに本質的な変化をおこさせるものだということがわかる。

その変化は、即座に・直接的に起こるものではないので説明は難しいけど、説明できないから関連がないわけではない・・というくだりに納得。

確かに絵本の影響を科学的に証明するのは難しい。
でも多くの人が、絵本の力・よさを実感していることは事実。私もとても実感している。
その実感(経験)をもつ人がその可能性を信じて発していくことこそ重要なのかな、と改めて思えた。

またこの絵本では、創作の物語絵本のほか、科学絵本や昔話絵本についても、子どもにとってどんな意味があるか、掘り下げて説明されている。

一方、かわいいだけの絵本、想像する余地が残されていない絵本、昔話で残酷な場面を省略してしまっている絵本、大人の好みで作られている絵本などには疑問が呈されていて、深くうなずきながら読んだ。

とはいっても著者も、古典ばかりにたよるのではなく、新しい絵本を大人が積極的にみとめていくこともすすめており、絵本選びは一筋縄ではいかないことがわかる。

子どもに変化をもたらすような絵本との出会いを数多く準備できるよう、大人の試行錯誤が要るなぁ。















2015年8月23日日曜日

『絵本をよんでみる 』五味太郎著


絵本をよんでみる (平凡社ライブラリー)
絵本をよんでみる (平凡社ライブラリー)

この本はすごい。
久々に、次々読みたい、でも読んでしまうのがもったいない、と思う本に出会いました。

13冊の絵本を、五味太郎さんが、小野明さんという方と対談形式で深く「よんでみて」いる本です。
絵本の描かれていない部分をよむ、というのは、みんな多少はやっていることと思いますが、そのよみが深すぎて深すぎて、全身・全力でぶつかっている感じです。
登場人物の来し方、人生、普段の過ごし方(笑)、職業、関係性、本音…などが、五味さんのフィルターを通して考察されていています。

特に、アーノルド・ローベルの『ふたりはいっしょ』がまくんとかえるくんと、同じくローベルの『ふくろうくん』の考察にはうならされるとともに、笑いました。

がまくんとかえるくんは老人もしくは子ども、二人は友情ごっこをしている?というネタや、ふくろうくんは読者の視点を意識したうえでの行動をとっている?など・・

他の絵本にも同様に、深くメスがいれられているので、ぜひいろんな人に読んでみてほしい本です。

絵本も本も、どう読むかは読む人のもつ厚み・深み次第なんだなあ…と思わされました。
絵本の感想、というより、絵本を引き金にした五味さんの思索・哲学が書かれているような感じです。

2015年6月7日日曜日

ワーママが勇気づけられる本


最近、ワーママ向けの本を2冊、再読してみた。
ひとつはこちらで、夫の協力仰ぐべく悩んでいた時期に買った本。


著者の小室さんの、家事の分担やタイムスケジュールが書いてあり、「これだけ手伝ってもらっていいのか!」と過去に勇気づけられた覚えがある。

また小室さんは、独身時代も振り返りつつ、仕事一辺倒の生活より、生活も充実ることをすすめている。
たとえば残業をするより恋人や友人とあう、新しい場所に行ってみるほうが新たな視点・発見がうまれて、仕事もはかどる、と。

子どもがいても、仕事以外になにかボランティアなり、活動をすることも、すすめている。それはそれぞれの活動がそれぞれのフィールドでのアイディアの素になったり、人との出会いがひろがったりするから。

また仕事では、人にまかせることで人を育てるべしとのこと。
仕事に時間がかかるタイプの人は、なんでも自分でしようとしすぎで、人にまかせることで、自分はまた別のことにも挑戦できると。

やりたいことをあきらめたくない人を後押ししてくれる本です。


もうひとつは、もう少しシビアな本。


博報堂の「リーママプロジェクト」をもとにした本で、はたらくママ社員さんたちの生の声がつまっている。

それによると、仕事と育児の両立=ワークもライフも100点満点というのは幻想だと。
確かにそうで、専業主婦だからこそできるようなきめ細やかな子育てをしながら、男性社員と肩を並べて仕事もしようなんて不可能に決まっている。

でも、そこであきらめるのではなく、自分の大切なものを見極めながら、少しずつ現状を打開することが大事、と。
結局もがくしかないのかもしれないけど、その声をあげなければ現状は変わらないというメッセージと受け取った。

掃除を少々していないとか、そんなことはどうでもいい、夕食は納豆ごはんでもいいと。(笑)
苦しみながらもそれを笑い飛ばす強い母親たちの姿に勇気づけられる本です。

正解なんてないけど、時々こういう本を読んで考えたり、勇気づけられています。











2015年5月15日金曜日

絵本講師養成講座の修了生勉強会

先日(5/9)、絵本講師養成講座修了生の勉強会にいってきました。

絵本講師の方お二人の講座をきいた後、専任講師のお話、そしてグループディスカッションでした。

講座をされたうち一人の方は、現役大学生(!)で、お仲間の大学生に普段講座をされているとのこと。
お母さん・お父さんになりたい学生さんたちに、子育てにおけるアタッチメントの重要性、そのために絵本をよむことの大事さなどを伝えていらっしゃるそうです。
お若いのにすでに実践にうつされているところがすごいなぁと思いました。

もう一人の方は東京で普段活動され、色彩心理学のようなものを学ばれたことから、そのこととからめた絵本講座をされているとのことでした。
そこで紹介された下記の絵本がとっても気に入りました。


絵本講座はそれぞれの方の個性がでるのがいいところだなと思いました。
同じ講座を学んでも、こんなにいろんな講座が結果としてうまれるというのはなかなか面白いと思います。

自分はなかなか、自分の意見を主張するのが得意でないのですが、その日の専任講師のお話で「自分の意見を持つことが大事、それは他人と違うかもしれないがそれはそれでかまわない」ということをおっしゃっていて確かにと思いました。

自分の意見を主張することは他人の意見も受け入れることに実はつながるんかなと思いました。

2015年4月28日火曜日

『子どもと本』



子どもと本 をつなぐのは人である というのがこの本の端的なメッセージと感じました。

筆者が司書教育をうけ、また実践もつんだ米国の事例が多く紹介され、図書館員の専門性(を保障する制度設計)という意味での日本の遅れが浮き彫りになっていました。

たとえばアメリカで筆者が実践していた選書方法を見ても、いかに蔵書の一冊が、ある意味社会の資産としての重みのもと選ばれているかがわかります。本は少なくとも二人の図書館員が読んだ上で、各種専門的な評価項目も鑑み、全体の蔵書とのバランスを考慮して選ばれる、さらに決まらない場合には常連の子どもに意見をもとめることもあるとは驚きでした。

そのような図書館員の眼が、児童書出版のレベルを高める機能を果たしてきたというのも、図書館員の社会における重要性を示していると思いました。

日本においても、公共図書館の不足を補完してきた文庫活動の先鞭をきられた石井桃子さん・土屋滋子さん・村岡花子さんや、明治時代に山口県立図書館で児童向けサービスの実現に尽力された佐野友三郎さんなど、素晴らしい方々が紹介されていましたが、その方々の意思が社会で認知され制度化されるにいたっていないのは筆者の指摘の通り残念なことです。

その他、昔話についての理解に役立つ専門的な知識も紹介されています。専門的に分析しすぎるがゆえに楽しむのを忘れないよう意識も倣いたいと思いました。

全体に、母親としてだけでなく、大学図書館員の自分にとっても学ぶことの多い本でした。

2015年3月16日月曜日

『あなのはなし』

あなのはなし
あなのはなし

本屋さんで偶然みつけました。
絵がちょこっと漫画チック?と思ったけど、チェコの昔話ってところと、訳者の方がまさきるりこさんだったので、買ってみる。

読み始め、お話がきゅうにはじまってひきこまれる。
なんといってもこのお話の主人公は「あな」。

靴下にあいたあながどんどん大きくなって独立してしまうなんて意味深い・・と思いながら読み進めてしまう。

お話は、あなが同行の仲間を見つける展開の繰り返しを経て、最後にはおおかみと「あな」が対峙する。
このおおかみ、最初からところどころであなたちを狙っている。

実際にあながあいているところはおまけみたいなもので、お話の面白さにひきつけられる1冊でした。

2015年3月8日日曜日

絵本を4年よんだら


最近になって絵本を本当に楽しめるようになった気がする。
今までも、きれいな絵や好きな絵にうっとりしたり、言葉のリズムやきれいさに浸ったり、ストーリーを楽しんだり感動したり、、楽しんではいた。

でも最近、絵本を読むということは、絵本に描かれていない部分をいかに思い浮かべるかなんだな・・ということがかなり実感されるようになった。

そのたぐいのことがいろんな本に書いてあったと思うのだけど、自分自身がそういう読み方をできていなかったんだと思う。
そのときは、「絵」「言葉」「物語(の筋)」は別々に存在していた。

先日ひさしぶりに、『しろくままちゃんのほっとけーき』をよんだら、以前と感じるものがぜんぜんちがった・・。

しろくまちゃん何回もエプロンかえたんだなとか、表紙に描かれてるたくさんのほっとけーきのうち半分ほどはどこにいったんだろうとか、しろくまちゃんがひとりでボールをかき混ぜてる間おかあさんはどこいったんだろう?フライパンあっためてるのかな?とか。

子どもが好きな絵本は何度も何度も読む、という感覚も最近わかってきた。自分も、何度も読みたい、何度もその世界にいきたいと思う絵本に最近よく出会うようになった。

こうなってみると、絵本を読むというのがいかに奥が深いかわかるし、子どもは絵本を楽しむ素質を持っていて、でもそれを伸ばすかどうかは周りの大人しだいということがわかる。読み手の頭の中にイメージがあるかどうかで、子どもに伝わるものが全然違うと松居直さんが本に書かれていた。(『絵本とは何か』

子どものとき、絵本でイメージの世界をひろげる経験がなかったら、字だけの本でイメージをひろげる段階にすすむことは難しいだろうなぁ。

2015年2月27日金曜日

図書館でのカビ対策について(2)


以前に基礎的なことを調べたのですが、もう少し具体的な情報をいくつかさがしました。

■原因調査について

カビの再発を防ぐため、原因調査をした記録がありました。(1)

  • データロガー設置で温湿度調査
  • 送風状況確認(ポリプロピレンのひもを書架にはりつけ・デジタル風速計)
  • コンタクトプレートで除湿機がカビの発生源になっていないか確認
  • RCSサンプラーで書架・床のカビを調査
  • レーザー粉塵計、Air-O-cellサンプラーで書庫内の粉塵を調査

■予防・環境改善

  • 除湿機設置
  • 床や窓などのカビ発生状態も確認したうえで、除去・清掃
  • 扇風機などを使用し送風、湿気だまりをなくす
  • 空調が外気をとりこむタイプなら雨の日は運転を抑える
  • 窓を発泡スチロールで閉鎖
  • 清掃の委託(の検討)

■はえた場合の除去について

  • HEPAフィルター・ULPAフィルターつきの掃除機で吸い取る
  • 70-80%の消毒用エタノールで、キムワイプ等でふき取る
  • この際、いったん資料はすべて除けて棚板もふきとることが重要
  • 専門業者に対策を相談すること

東京文化財研究所では、作業の際、下3段のみと優先順位をつけて作業されたそうです。(1)
また、文部科学省図書館では、除去作業の前にまず、不要と思われる資料2000冊を選別し廃棄されたそうです。(2)
カビの除去作業といっても日ごろの通常業務の合間に行うため、いかに効率的に(再発を防ぐことも含め)対策をとることができるかが重要だと思いました。


<参考
(1)佐野千絵ほか. 図書資料のカビ対策:三康図書館の事例. 保存科学. 2002, 42, p. 87-100.
http://www.tobunken.go.jp/~ccr/pdf/42/pdf/04210.pdf

(2)松家久美. 特集, 大切な資料を守れ!-資料保存: 利用のための資料保存~カビ除去作業の外注について~. びぶろす. 2014, 66.
http://www.ndl.go.jp/jp/publication/biblos/2014/10/02.html

(3)伊藤もも. 特集, 大切な資料を守れ!-資料保存: カビ発生後の当館での書庫管理について. びぶろす. 2014, 66.
http://www.ndl.go.jp/jp/publication/biblos/2014/10/03.html

資料の参照日は2015.2.21です。

2015年2月13日金曜日

スタンダードブックストアのイベントにいきました



2月10日(火)に下記のイベントに行きました。

『本で人をつなぐ まちライブラリーのつくりかた』刊行記念 礒井純充トークショー

本で人をつなぐ まちライブラリーのつくりかた
本で人をつなぐ まちライブラリーのつくりかた

まちライブラリーは名前や概要を見聞きしてはいたのですが、ちゃんと情報を得たことがなかったのと、この本屋さんに前から行ってみたかったので参加しました。

内容は、まちライブラリー提唱者の磯井さんをはじめとする四名の方のトークショーで、まちライブラリー発足までの経緯とともに、その裏にあるみなさんの思いを聴くことができました。

印象的だったのは、みなさんの、「オモロイ」を原動力にそれを実行に移すエネルギーでした。

まちライブラリーとは何ぞやということはむしろわかりませんでしたが、決まった様式はないこと、そして共通項は本を介して人がつながる「オモロイ」場所、ということがわかりました。

また本は、本を選ぶとか本の感想をいうという行為で「表現したい」という人の欲を昇華させてくれるもの、そしてまちライブラリーはそれを体現する場所であるという磯井さんのお話には納得させられました。

本を楽しむ、人とつながることを楽しむ、そういうことを大事にすることは従来やってきたことに加えて大学図書館でも取り入れていけるといいなと思いました。

また、イベント開催にあたりむやみに人を集めない(!)、それよりコンセプトをはっきりして続けて、本当にきたい人を待つ、というお話には勇気づけられました。

いろいろなまちライブラリーをぽつぽつ尋ねてみたいなと思います。


2015年2月9日月曜日

『こねこのハリー』

こねこのハリー (世界傑作絵本シリーズ)
こねこのハリー (世界傑作絵本シリーズ)

ひさびさに「これは!」と思った絵本です。図書館で出会って、即、てもとにほしくなりました。
てのひらにすっぽりおさまるサイズ、絵のやさしいタッチ、開く前からかわいさがあふれ出ているのですが、それだけではなくお話もまた絶妙です。

このこねこの何気ない言動本当にリアルで純粋でかわいくて、でもそれをあくまでフラットに描いているというか、甘さが抑えられていてそれが絶妙です!

他にも同じシリーズで3冊でていて、お話はどれもそのような子どもらしさ、かわいさにあふれていました。

まっててね ハリー (世界傑作絵本シリーズ)
まっててね ハリー (世界傑作絵本シリーズ)

ハリー びょういんにいく (世界傑作絵本シリーズ)
ハリー びょういんにいく (世界傑作絵本シリーズ)

ハリーのクリスマス (世界傑作絵本シリーズ)
ハリーのクリスマス (世界傑作絵本シリーズ)

大人が、子どものかわいさを再認識できて優しい気持ちになれる、すごく素敵な絵本だと思います。
子どもにとっては、どうかな?少し大きい子なら、共感できるかな~。

2015年1月27日火曜日

『あれこれたまご』『ごろごろにゃーん』


あれこれたまご (かがくのとも傑作集―わくわく・にんげん)
あれこれたまご (かがくのとも傑作集―わくわく・にんげん)

たまごがスーパーで売られるところから、いろいろなお料理に返信するまでが、関西弁&子ども目線でいきいきと描かれているおもしろい絵本です。

子どもってやっぱりお料理・食べる関係は大好きです。
娘も、おばあちゃんの家で食べた茶碗蒸しがまた食べたいなぁ、と思い出していました。
私もこれを読んで、たまごっていろんな食感に変身するなぁとあらためて思いました。

ごろごろにゃーん (こどものとも傑作集)
ごろごろにゃーん (こどものとも傑作集)

絵のもつ不思議な雰囲気に脱力&少し吹き出してしまいます。

言葉は毎ページ全部一緒です。
娘は「ことばが全部いっしょだね。つまんない」と言っていましたが・・
その後絵をみて感想を言ったりもしていたので、多少は絵を見て楽しんだのでしょうか。

意味があるのかないのかわからない不思議な絵がつらなっていて深読みしてしまいます。結局あまり意味は分かりませんが。


そういえば先日、休日に遊び代わりに(?)、家の絵本をタイトル順にならべてみたところ、娘は夢中で一緒にやってくれました。
きれいに並べると、忘れてた絵本も奥からでてきたりして、久々に読むものも手にとれそうです。

2015年1月21日水曜日

『おちゃのじかんにきたとら』


おちゃのじかんにきたとら
おちゃのじかんにきたとら

まさにタイトルどおりの内容。
お茶の時間にやってきたとらが、家じゅうの食べ物・飲み物を平らげてしまう。

教訓めいたものなどがないのがよい。とらの豪快なたべっぷりや、とらによりそう女の子のうっとり感、起きたことをそのまま受け入れてる感じなどが楽しい。
すごくリアルというわけでもないけど動きの感じられる絵。

娘も、食べつくしてしまうとらに、驚いたり喜んだりしていた。

先日、エメラルドブックスとハニカムブックスをはしごして、入手したうちの1冊。娘はすごく気に入った模様。

絵本選びは、子供と一緒に買いに行くとどうしてもうまく決まらないので、自分一人でいくのがいいかなと思う。
子どもに読んであげて判断する、というのが理想なのかもしれないけど、一緒に行くと娘がほしいものと私がほしいものが違い、もめる。。
子どもがほしいものも尊重してあげたいけど、普段の感じからすると一時的な気持ちでいってる感じもするので。

いつも結構私にくっついて離れない娘だけど、私が一人で外出後帰宅して3冊絵本を読んであげたら満足して去って行っていた。絵本を読んであげたときの満足感はやっぱり他にないものかな?と思うことが多い。

2015年1月19日月曜日

『いたずらきかんしゃちゅうちゅう』『かさじぞう』

いたずらきかんしゃちゅうちゅう (世界傑作絵本シリーズ―アメリカの絵本)
いたずらきかんしゃちゅうちゅう (世界傑作絵本シリーズ―アメリカの絵本)

機関車のちゅうちゅうが、ちょっとしたいたずら心をおこして大騒ぎとなるお話。
ちゅうちゅう疾走中の、ちゅうちゅう&周囲の躍動感がすごい。

大きい街と小さい街をいったりきたりする間に変化する風景の描写に当時の生活を感じられる。
またなんといっても、ちゅうちゅうのいたずらに怒る町の人とはうらはらに、心配をして本気で助けにいく大人たちの存在がとてもほほえましかった。(ふつうだと怒られる気もするけど、)最後までちゅうちゅうは怒られることなく、無事でよかったなぁと迎えられるのは子どもには安心の結末かなと思いました。

『絵本とは何か』でも例示されていたとおり、カラフルでなくても(絵はモノトーン)、線と構図により物語のイメージをふくらましている絵本というのが納得できました。

見返しをみたとたん、娘が「はやーい」といったのが面白かったです。


かさじぞう(こどものとも絵本)
かさじぞう(こどものとも絵本)

昔話の再話でも適当に省略されていない作品として『絵本とは何か』で例示されていたので読んでみました。
扇にかたどった画面構成といい、絵のタッチといい、物語の雰囲気とよくあっています。
絵が平面的なのがまた日本的な味が出ていると思いました。

横で聞いていた夫は「この当時から資本主義やったんやな」という珍しい感想をもっていましたが。
その表現はともかく、確かにかさをつくって売れず、そうすると年越しのおもちもないというような生活の様子は、今の子供には信じられないだろうなと思います。

言葉のひびきも面白くて娘は喜んでいるようでした。

2015年1月18日日曜日

『絵本とは何か』

絵本とは何か (エディター叢書 6)
絵本とは何か (エディター叢書 6)


絵本について考えるのに大変示唆に富んだ本です。
著者の松居直さんは、日本で初めてオリジナル創作物語絵本を本格的に出版された編集者の方です。(それまでは子ども用の絵雑誌、昔話のダイジェスト、少数の海外からの翻訳絵本、などが主に流通していたようです)


その福音館書店発行の月刊「こどものとも」シリーズがもととなって単行本として発行された絵本の中には、今もロングセラーとなって親しまれているものが多くあります。
★こどものとも復刻版


この本ではその編集の経験をもとに、子どもの反応だけではなく、芸術・文学・教育・・など様々な視点による絵本のみかたが書かれており勉強になりました。
特に強調されていたのが、絵本を子どもに読むことが、書き言葉ではなく、耳で聞く豊かな言葉の体験となる、ということでした。
絵本は本への架け橋であるとか、読むことへのスタートであるという考えが(自分が賛成かは別として)どうしてもあったので、新たな視点となりました。


また、絵本の絵や言葉に関しても深い洞察があり、絵本は物語をあらわすものである、だから物語の世界をうまく形作っている絵本こそよい絵本だということです。
似たようなフレーズはよく見聞きするものの、この本では具体例が豊富でだいぶ理解が深まりました。


まずはおもしろい物語があり、絵はその物語の世界をうまく再現できる場面を切り取って描いているかという点が大事だそうです。
そうすると絵本によっては、絵が先にあってその連続で表層的に物語を作っているというか、絵と絵の間に思い浮かぶ事柄が少ないような気もしてきました。


絵本を評価・批評する目を持つことは、自分の中で否定的な見方が大きくなるようで、その是非はいまだに自分ではわからないまま勉強を続けています。
でも、こうしたしっかりした選択眼のもと出版された多くの絵本が子供たちを楽しませていたり育児を支えてくれていることを思うと、大人がしっかりした批評・選択の目を持つこともやはり大事なのかなと思います。


そのあたりに関して自分の考えはゆれていますが・・。
できるだけいろいろな考えにふれたうえで自分の考えをかためていきたいと思います。







2015年1月11日日曜日

『子どもの本の選び方』

子どもの本の選び方
子どもの本の選び方

子どもの本(絵本~児童文学)の選び方・与え方についてかなり具体的・実践的に書かれた本。

筆者曰く、刊行される子どもの本の四分の三を占める「悪い本」の見分け方を中心に書かれている。(悪い本の例:古典・名作のダイジェスト版や、いい加減に省略された民話・伝記などが中心。)

その良し悪しの基準は、「子どもが本当に楽しめるかどうか」。冒頭にある通り、子どもに本をすすめる理由はそれが外で遊ぶことやテレビとも同様に「楽しみ」「喜び」であるからとのこと。

だから、読書を教育と結びつけて強制することでかえって子どもが読書嫌いになる状況を憂えている。しかし長期的には読書に教育的効果があることは付け加えられている。

子どもの本の選び方として下記12項目が具体的説明とともに挙げられているのと、長く読み継がれたものは子ども自身が評価したものとして推奨されている。そして選ぶ目を養うには、目安として200冊の実物に目を通すといいとのこと。

(参考までに。子どもの本の選び方 12項目)
  • 「書き出しに注意する」
  • 「さし絵をみる」
  • 「安すぎる本には手を出さない」
  • 「有名人の監修・推薦は要注意」
  • 「全集形式の古典・名作は要注意」
  • 「古典・名作は「あとがき」「解説」を読む」
  • 「年齢対象の低い古典・名作は要注意」
  • 「年齢対象の低い伝記は要注意」
  • 「無署名の本は要注意」
  • 「いい本はオリジナルな本の中にある」
  • 「作者名やシリーズ名をおぼえる」
  • 「本の紹介や「ブックリスト」の活用」

また子どもへの本の与え方として、読み聞かせや、その逆に子どもが親に本を読む形式もすすめられている。また「動機づけ方式」と銘打ち(今でいう「ブックトーク」のこと?)、本の内容や面白さを大人が子どもに紹介するやり方も示されていた。

本好きになるかどうかというのは、本の楽しさを知るきっかけの有無にあると思うが、「何を」より「誰に」薦められるかというのは大きい要素だろうなー。



2015年1月10日土曜日

2014年に読んだ本

2014年に読んだ本は87冊でした。
読んだ本を振り返ると、このときに自分の考えがこう変わったんだなーとかいうのが思い出されてなかなか楽しいです。
もうちょっと勉強の本も読めるといいんだけどな・・エッセイとかのほうが楽しくてつい、という感じです。

kayohikoの本棚 - 2014年01月~2014年12月 (87作品)
赤ちゃん教育
野崎歓
読了日:01月11日
評価5

楽しい和ー
山口智子
読了日:02月09日

すごい本屋!
井原万見子
読了日:02月23日

ベストセラー炎上
西部邁
読了日:03月01日

社会の抜け道
古市憲寿
読了日:09月07日
評価3

ふくわらい
西加奈子
読了日:10月05日
評価3

まないた手帖
山本ふみこ
読了日:10月26日
評価4

オラオラ女子論
蜷川実花
読了日:10月29日

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