2021年5月30日日曜日

『三つ編み』 レティシア・コロンバニ(著/文)

レティシア・コロンバニ(著/文)
齋藤 可津子(翻訳)
発行:早川書房

この小説は、とても力強くて、壮大。
インド、カナダ、イタリアの地で、それぞれ苦境におかれた三人の女性が、苦しみに立ち向かっていく様子が描かれている。

3人の状況は、実際に自分に近いというわけではないけど、つらい状況に置かれたときどうするか、という意味では、自分も勇気づけられた。
3人を支えているのは自分の信念で、その信念を支えているものもそれぞれにある(誇りだったり、神だったり、愛だったり。というように見えた)。
信念を持ち、希望を持つことの強さが描かれていた。

社会的に不利な立場にある場合、その立場から脱するためには、すごいエネルギーが要る。
自分が欲するものや、なりたい状態を明確にして、それを手にするための行動を起こす必要がある。
時には他人を説得したり、他人の行動を変えさせたりする必要もある。
ほとんどの場合、誰かが自分のためにそれをやってくれることはないから、不利な立場にある自らが、力をふりしぼって、立ち向かわないと事態は解決し難い。

最近は、これまでそんなに読まなかった海外の文学作品が気になる。
旅行にも行けないからか、身近すぎるものより、違う世界を見たい欲が高まってるのかもしれない。
その時々で、読みたい本が違うのはまったく違うのは面白い。

2021年3月7日日曜日

「よい絵本とは」について考えたこと

 娘に絵本を読んでくる中で、絵本関係の本をたくさん読んだ。その中で、「よい絵本とは」という情報にたくさん出会い、だんだん自分の中での情報の受け取り方が変わってきた。

「よい絵本」という言葉をつかうことに何も感じてなかった(このブログでも特に意識せず過去に使ってた)

「よい絵本とは」という情報に触れて、なんとなく、従わないといけない気になっていた

もっと自由に読んでいいのではと思うようになった

絵本についての考え方は人それぞれだし、価値観によって違うから、自分の価値観と照らし合わせて参考にするかどうか考えたらいいと思うようになった

それでもなお「よい絵本」のフレーズにひっかかるものがあり、さらに考えて、何にひっかかっていたのかわかったので書いておく。

なんの注釈もなく「よい絵本とは〇〇だ」と断定的に語られるとき、「自分にとってのよい絵本」ではなく、誰もが賛成する「よい絵本」という意味を含んでしまう気がする。(実際には誰かが考える「よい絵本」しかないとはと思うけど)
少なくとも私はそのニュアンスを知らず知らず受け取っていて、最初従わないといけない気になってしまったのかなと思った。

実際には、「よい絵本とは〇〇だ」と語られてるときでも、いろんな場合があると思う。

  • ある人や団体が、自分(たち)が価値を感じるのはこういう絵本だ、といいたいとき
  • 歴史的によいと考えられてきたのはこういう絵本だ、とか、多くの人がよいと考えているのはこういう絵本だ、といいたいとき
  • ある範囲や目的の中での「よい絵本」を語っているとき
  • 世の中で「よい絵本」はこうあってほしいこうあるべきだといいたいとき
(もちろん、これは自分の考えに過ぎないとか、説明してくれている場合もある)

これらの場合に何のことわりもなく「よい絵本とは〇〇だ」と語られてたら、説明不足ではあると思う。でも、受け手が↓のようなリテラシーを持てば、問題は起きないと思う。

  • 実際に意味するところ(個人の意見なのか、多数による意見なのか、条件つきなのか、それを推奨してきているのか、など)を理解したうえで、最終的には自分の価値観と照らし合わせて判断する
  • 多くの人が賛成しているかどうかの違いはあっても、一意見であるととらえる
  • 自分が別の意見を持つことも自由だというスタンスで情報を受け取る

ちなみに、以前読んだ『どのような教育が「よい」教育か』(苫野一徳著、講談社、2011)という本ではタイトル通り「よい」教育(制度)について論が進められているが、ここでその議論をしている理由は、教育制度は政策ともからんでいて、その範囲では一つの方向性を設定する必要があるからかなと思う。そこでは、お互いの自由を承認できるための教育がよい教育ではないか、ということを提案していた。

そう考えると、「よい絵本」について、世の中での一つの方向性を設定する必要自体、あんまりないように個人的には思う。たとえば公共図書館で、多くの子どもにとって価値のある本を選書するためにその条件を見極めたいとか、ある教育政策がとられている中でそれにあう絵本をよい絵本として考えたいなど、ある範囲の中で答えを出したい場合はあるだろうけど。それはあくまである範囲の中でのよい絵本に関する考えだと思う。

「よい絵本とは~だ」と言っている=一つの方向性を設定しようとしている、とは限らないけど、「よい絵本とは~だ」という言い方には、それだけでなんとなく、それ以外の意見の存在を受け入れないようなニュアンスがあるように感じる。自分でも使い方に気を付けたいし、断定している言い方が説明不足だったとしても、個人的には、それまでに積み重なってきた知見としては参考になる場合もあるので、それぞれの情報の性格に応じて参考にしていきたい。

なんでこんなことを考えていたたかというと、ひとつは、自分が数ある「よい絵本とは~だ」を読んで、従わないといけない気分になったのが何か嫌だったので理由を考えて再発防止(?)したかったから。ふたつめは、「よい絵本とは」情報をどう頭の中に位置づけて自分がどう考えていったらいいかわからなくなったから。
大学図書館で働いていながらリテラシーが身についてなかったんだなとは思うが、実体験をもってわかったのでいい勉強だったと思うことにする。

2021年2月14日日曜日

【読書の記録】『はじめての哲学的思考』苫野一徳


 







『はじめての哲学的思考』苫野一徳(筑摩書房、2017)

この本は、哲学とは何か、哲学的な考え方がいかに実生活の中で有用か、そしてその具体的な方法について説明しています。

一番印象的だったことは、哲学は意味や価値に関する本質を解き明かす営みである、ということです。意味や価値に関する考え方は人によって異なり(意味や価値は個人の欲望をもとに生まれている)、絶対的な真理はないからこそ、現実の世界ではお互いに納得できる共通の理解に至る必要がある場面があり、哲学はその場面で役立つ、ということでした。

どのように共通の理解に至るのかについては↓のように理解しました。

  • 議論をしようとしている事柄について、まずそれぞれの人がどのようなどのような意見をもっているのか、その意見はどういう価値観に基づいているのかを理解しあう
  • 双方の意見・もとづく価値観を理解しあったうえで、それらの価値観・意見の妥当性をお互いに検討し、双方とも共通で目標とできるような事項へと集約させていく

また、哲学的な考え方を実践する注意点やコツとしては↓の点が紹介されていました。

  • 自分の意味や価値の世界に基づいて、それが人にも当てはまると判断(一般化)しない
  • 建設的な回答が出ないような、「真か偽か」の問いの立て方をしない
  • 自分の価値観だけに基づいて、事実から「〇〇すべき」を導かない
  • 「〇〇せよ」ではなく「どうしたら〇〇できるか?」と考える
  • (↑のようなことをほかの人が行っていないかにも気を付ける)

哲学的思考の実践方法としては、↓が紹介されています。

  • 「哲学対話」(本や映画などの好きな芸術作品について、そのすばらしさを言語化し、お互いに話し合うことで、自他の価値観を再確認し、時に共有できる)
  • 「共通理解志向型対話」(ディベートのように二手に分かれて勝敗を競うのではなく、議論の末にお互いの納得できる結論を導くことを目標とする)
  • 「本質観取」(ある事柄の本質を、複数人で話し合う。事柄の本質は、自らの経験などに基づいて、その特徴や類似事項との違い、意味付けなどから考える。最終的にはその事柄に関する疑問や悩み?の解決について話し合う)

また、複数人での話し合いに限らず、自分個人の問題に関しても、本質を見つめることで解決することがある事例が書かれていました。(自分の考えが欲望に根差していることを自覚し、その欲望を満たすために努力する/あきらめる/欲望を変えるなどの対策をとる)

哲学は、その性格ゆえに、これまでに哲学によって解き明かされてきたことを自分に生かすことでも役立つし、これから何かを議論していく際の手法としても役立つことがわかりました。

なお、本書では教育学に関する事例が多く挙がっています。
たとえば教育学において各論を主張する人が異なる価値観に基づいて主張を行って議論が平行線になってしまう事例や、議論に関わる人の間で語の定義の解釈自体が異なる例、自分の成功例を一般化してしまう例が挙がっていました。

教育学は多くの人に直接的に関係する学問だと思うので、哲学的な立場に根差した建設的な議論が深まってほしいし、情報を享受する側は、哲学の知識を持っておくことでそういった議論の破綻に気づけるなと思いました。


2020年9月6日日曜日

【読書の記録】『「読む」って、どんなこと?』高橋源一郎




『「読む」って、どんなこと?』高橋源一郎(NHK出版、2020)

 この本は、「読む」行為を、深く考えてみようという趣旨の本です。いくつかの例文を題材に、筆者の高橋さんが「読む」行為を掘り下げ、その中で、「読む」に関する高橋さんの考えが示されています。

たとえば、「たくさん問題を産み出せば産み出すほど、別のいいかたをするなら、問題山積みの文章こそ、「いい文章」だ、ということです。つまり、その文章は、問題山積みのために、それを読む読者をずっと考えつづけさせてくれることができるのです。」(p64)とあります。

考えを促してくれる文章がいい文章だ、ということは、高橋さんは読書に、考えさせてくれることを最も期待しているということがわかります。

同時に、何がその人にとって「問題山積み」の文章かは、個々の人によって違うだろうなと思いました。(多くの人にとって「問題山積み」の文章、てのはあると思いますが)

それから本書ではあえて「学校では教えない」であろう文章がいくつか紹介され、それらを読むことを高橋さんが実践しています。またそれらはなぜ「学校では教えない」と思われるのか、そのことについても考察してみる、という「読み」もなされています。

それは文章自体を読むだけではなく、この文章はなぜ書かれたか、この文章について自分はどう思うのか、それはなぜか、というような、文章の外から、文章の立ち位置やそう思う自分の立ち位置、それを超えた様々な事象についてを考えるという高次の読み方なのかな、と思いました。

また、高橋さんの「読む」に対する考えは↓とも書かれています。

「絶対的に「悪い」ものがあるわけではありません。あるものが「善」にもなり、「悪」にもある。いや、「善」でかつ「悪」だったりもする。だからこそ、わたしたちは、用心しなきゃなりません。そうではありませんか。そのための武器こそ、「読む」ことなんだと思うのですけれど。」(p112)

読むことは考えること、そしてそれは、自分が無意識にとらわれている常識などから自由になるため、ということかな、と理解しました。いろいろと考えさせてくれる本でした。

2020年5月30日土曜日

読書中の頭の中の音読について

本を読むときの「内声化」(黙読時に頭の中で音読すること)が、文章の内容理解にどう影響するか調査した論文を読みました。


森田 愛子, 高橋麻衣子. 教育心理学研究. 2019, Vol.67 No. 1, p. 12-25.
https://doi.org/10.5926/jjep.67.12, (参照 2020-05-30).

内容

これまでに音読と黙読の比較研究では↓のような結果が出ているそうです。
  • 小学校低学年での理解度は音読>黙読だが、高学年では黙読=音読か黙読>音読
  • 読み能力が低い場合に理解度は音読>黙読
  • 読み能力が低い場合、音読・黙読で眼球運動が同じだが、読み能力が高い場合には音読・黙読で眼球運動が異なった(理解しにくい場所にとどまったり、わからない部分に戻るなど)
こちらの論文では↓の2点が目的とのことでした。
  1. ”音読条件と黙読条件の間にみられる違いと,内声化強制条件と内声化抑制条件の間にみられる違いとを比較することで,音声化と内声化の機能の共通点と相違点について検討する”
  2. "内声化を行う程度によって読み手を分類し,文章理解や眼球運動に違いがあるかを調べる"
実験は↓の2つです。いずれの場合も”音読,通常の黙読,文章のすべてを内声化させる黙読(以降,内声化強制),内声化を抑制しながらの黙読(以降,内声化抑制)という₄条件を設け,文章読解時の記憶や理解成績,読解にかかる時間,および眼球運動を比較”しています。

実験①
  • 大学生24名(男12、女12)※内声化抑制ができなかった2名のデータは省いた
  • 12セットの課題を実施(文章1つを読んで、逐語記憶問題3問、文章内容問題3問に回答)
実験②
  • 大学生23名(男7、女16)※内声化抑制ができなかった2名、事前調査で内容理解できなかった1名のデータは省いた
  • 12セットの課題を実施(文章1つを読んで、文章内容問題3問に回答)
  • 普段の内声化スタイルを事前に調査⇒内声化多12名、内声化少8名
結果と考察は↓の通りでした。
  • 音読は黙読と比べ時間がかかり、眼球の運動が少なく、黙読時と成績は変わらなかった
  • 内声化は内声化しないのと比べ時間がかかるが、内声化するほうがしないより文章内容問題の成績が良い結果も出た(実験②)
  • 通常内声化をしているかしていないかによって問題の成績への影響が異なった
    • 通常内声化をしている場合の成績
      • 内声化抑制<黙読<内声化強制<音読
    • 通常内声化が少ない場合の成績
      • 内声化抑制<音読<内声化強制<黙読
  • 内声化は音読同様に内容理解を促進する可能性があるが、時間がかかるなどのデメリットもある。一方、内声化をしない黙読は、少ない時間で内容理解も促進できる高次の読み方だが、それ自体ができない場合も多い
  • 年齢や対象となる文章などについても考慮してさらなる検討が必要。

感想

同じ本を読むという行為でも、人によって頭の中でのプロセスが違うということは興味深いです。
こうすると絶対に読解力が上がるというのはいえないとしても、内声化する・しないというやり方があることを知ったり、わからない言葉のところでは立ち止まって考える・わからなかったところに戻るなどの読み方を知っておくことはひとつのヒントかもしれません。


2020年5月10日日曜日

絵本の読み聞かせと親子関係

絵本の読み聞かせが親子関係に与える影響についての論文を読みました。

佐藤 鮎美. 絵本遊びが親子関係に良い効果をもたらすのは本当か?. ベビーサイエンス. 2016, vol.16, p. 18-27.
https://www.crn.or.jp/LABO/BABY/LEARNED/16/Sato_BabyScience2016.pdf, (参照 2020-05-10).

絵本遊び(という表現が使われていました)がその後の言語発達や就学後の学業成績にいい効果をもたらすことはわかってきているそうですが(*)、親子関係にいい影響を与えることについては科学的検証はほとんどされていないとのことで、本稿ではその科学的検証(↓の2つの実験)が行われていました。
  • 生後9か月の赤ちゃんと母親10組を対象に、①絵本遊び、②おもちゃ遊び、③ツールなし の3種の遊び場面(各10分)をしてもらい、子供の行動に対する母親の働きかけ頻度を比較。
  • 生後9か月のあかちゃんとその母親28組を、①3か月間毎日絵本遊びをするよう指示したグループと②そうでないグループにわけ、生後9か月および生後12か月の時点のおもちゃ遊びの様子(母親からの賞賛の頻度と、子供のほほえみの頻度)を比較。
実験の結果からは、2つのことが導き出されていました。
  • 絵本遊びではほかの遊びより、母親の働きかけが多かった。(回数だけでなく、子供の意にそった働きかけが増えた)
  • 絵本遊びを増やすことによりほかの時間にも行動が変化する可能性が示唆された。(絵本遊びを増やしたことで、おもちゃ遊びの時間にみられる賞賛や子供のほほえみが増えた。ほほえみの増加=子供が普段から親にほめられていることの示唆と考えられるとのこと。)
このことの考察として、
  • 絵本と子供の媒介に親が必要であるからこそ、絵本の読み聞かせの習慣によって、(読み聞かせ以外の場面でも)親が子供を観察し、子供に対して応答的(子供の行動に対して的確・即座に反応する)になる変化がみられたことが考えられる
とのことでした。
母親が応答的であることは、母子関係における「愛着」(=「時間や場所を超えて持続する対人間の感情的なつながり」)の形成に影響すると考えられているそうです。

さらに、結論として書かれていたことが印象的でした。
筆者は、このように、親の応答的な働きかけを増やすという意味では絵本がおもちゃ遊びに勝る可能性があるけれど、それはひとつの側面にすぎないと言っています。
”今回得られた結果は、あくまで「母親の応答性」という一側面に特化した際、絵本遊びが有利か もしれないことを示唆するものである。筆者としては、 日々の生活のなかにはさまざまな遊びがバランスよく混ざっている状態が一番望ましいと考えている。では、本研究のように各遊びの特異性など研究する必要などないかといえば、それもまた否であろう。乳幼児発達の研究者である以上、乳幼児を取り巻く遊びの特性やその効果 を実証的に明らかにし、それを踏まえたうえで、「どの遊びも必要である」ことを発信していく必要がある。”
一母親としては(大学図書館員としても)、こうやって、研究の立ち位置を示してもらえるととてもありがたいなと思いました。

*↓こちらが引用文献として挙げられていました。読んでませんが。。
Wade, B., & Moore, M.:An early start with books:Literacy and mathematical evidence from a longitudinal study. Educational Review 50, 135- 145 (1998).

2019年10月5日土曜日

PISA型読解力に関するメモ

PISA

  • 2000年よりOECDが15歳を対象に3年ごとに実施している学力テスト
  • 数学的リテラシー、科学的リテラシー、読解力をはかっている
  • PISAではかっている上記の能力は、OECDが定める「キーコンピテンシー」の一部である
  • 「キーコンピテンシー」は、知識や読み書き等の学習能力だけではなく、学校や職場に限らずに人生の成功や社会の良好な動き(生産的な経済、民主的なプロセス、社会団結、平和などを含む)に貢献するような総合的な資質・能力
    • カテゴリー①相互作用的に道具を用いる
      • 言語、シンボル、テキストを用いる(1A)
      • 知識や情報を用いる(1B)
    • カテゴリー②異質な集団で交流する
      • 他人といい関係を作る(2A)
      • 協力する(2B)
      • 争いを処理し解決する(2C)
    • カテゴリー③自律的に活動する
      • 大きな展望の中で活動する(3A)
      • 人生計画や個人的プロジェクトを設計し実行する(3B)
      • 自らの権利、利害、限界やニーズを表明する(3C)
  • PISA型読解力は、読むスキルだけではない広い意味の言語力を指している
    • 情報の取出しだけでなく理解や評価も含んでいる
    • テキストを読むだけではなく活用することも含んでいる
    • テキストの内容だけではなく構造・形式や表現法も評価すべき対象となる
    • テキストには文章(連続的テキスト)だけでなく、図表やグラフなどの非連続型テキストを含んでいる

日本の政策

  • 2000年以降日本のPISAテスト成績(特に読解力)が低下したことを受け、学習指導要領で「言語生活の充実」がうたわれるようになった
  • PISA型読解力を高めるために2007年度から「全国学力・学習状況調査」が実施された
  • 2014年には学校図書館法改正により、学校司書配置が法制化された
  • 2015.12に文科省は『読解力育成プログラム』開始
    • 3つの重点目標:1. テキストを理解評価しながら読む力を高める取組の充実、2. テキストに基づいて自分の考えを書く力を高める取組の充実、3. 様々な文章や資料を読む機会や、自分の意見を述べたり書いたりする機会の充実
    • 5つの戦略:1. 学習指導要領の見直し、2. 授業の改善・教員研修の充実、 3. 学力調査の活用・改善等、4. 読書活動の支援充実、5. 読解力向上委員会(の開設)
  • 2017.3公示の新しい学習指導要領でも、PISA型読解力は「全ての学習の基盤となる資質・能力」の一つとして、その能力の向上の必要性が提起されている

参考

  1. 田中博之. 読解力とはどのような力か. 情報の科学と技術. 2018. 68(8), p.390-394 https://doi.org/10.18919/jkg.68.8_390
  2. 河西由美子. 情報リテラシー概念の日本的受容-学校図書館と情報教育の見地から- . 情報の科学と技術. 2017. 67 (10) , p. 514-520 https://doi.org/10.18919/jkg.67.10_514
  3. 米谷優子. 日本における読書教育と読書推進策 : 情報リテラシー教育との関連から. 園田学園女子大学論文集. 2011. 45, p.019-040 https://www.sonoda-u.ac.jp/tosyo/ronbunsyu/園田学園女子大学論文集45/019-040.PDF

2019年9月8日日曜日

子どもにわかりやすい絵本の表現

版元ドットコムより転載

子どもに歯ごたえのある本を
石井 桃子(著/文)
ISBN 978-4-309-02435-6   C0095 四六判 288頁
定価 1,700円+税
発行 河出書房新社
書店発売日 2015年12月10日




この本は、石井桃子さんの対談集です。
翻訳者、児童文学者として著名な石井桃子さんが、外国の本の出版や創作についてアメリカで学んだり、読み聞かせ・文庫活動の実践をする中で得られた考えを知ることができます。

子どものための本選びについては、アメリカで公共図書館が果たす役割の大きさにふれられています。アメリカでは公共図書館が、子どもが面白がって読む本を購入して代々引き継ぐ役割を果たしており、その結果、書棚の多くが、そのように引き継がれた基本図書で占められていたとのことでした。

つまり、大人は、多くの子どもが面白がって読む本から共通要素を見つけることで、子どもにとって面白い本の基準を割り出し、それをもとに選んだ本への子どもの反応を見る、ということを繰り返して本を選んできているということです。

その中で得られたひとつの基準としては、

「何を目安に選ぶかというと、子どもには、外の世界がどう目に見えるように書かれているかということです。――心の中の「淋しい」だの「悲しい」だのっていうことは、読み手の心の中におこればいいことです。やっぱし「泣いた」とか「お母さんがいなかった」とかいう心の中におこる情緒は、物か事で表さなくちゃならない」(p126)

と言われており、そうやって具体的に物事が動く方法で書かれている物語の例として、昔話を挙げられています。そして出来事でなく、心理描写、情景描写に分量が割かれている場合、小さい子供には理解がしづらく訴えるものが少ないのではないかと言われています。

子どもにこういう絵本を読ませなきゃいけない、ではなく、子供に分かりやすい絵本はこんなのかなぁ、という意味で、とても参考になるなぁと思いました。

ちなみに、そうやって物事が明確に目に見える形で描かれているとき、「自分もその感情を感じたことがある」と状況を思い出しやすくなると思いますが、そのときの感情が「悲しい」「さびしい」という言葉であらわされるということは、もしかすると親が適宜会話などでフォローすることで身につくのかもな。。(ラべリングを知るのはあとからゆっくりでいいと思いますし、「語彙を増やすために教えなければ!」という気合が先行すると子どもも楽しめないかもしれないので自然な範囲で)と個人的に思いました。

2019年9月7日土曜日

読み聞かせの影響に関する文献を調べてみた

娘はもうすぐ9歳、今も毎日ではないけど絵本を一緒に読んでます。
何百ページもあるハードカバーもガンガン読めるのに絵本を読んでという姿を見ると、やっぱり私とのコミュニケーションの時間の意味が大きいのかなぁと思います。
一方、会話中に本からの知識をぱっと教えてくれるあたり、本が好きなだけじゃなくちゃんと定着してるんだなぁと思います。(親バカ)

読み聞かせは色々な影響(言葉の力がつく、本好きになるなど)を与えるという話はよく耳にし、うたがう人もあまりいないと思いますが、どちらかというと自分の大学図書館員としての興味から、研究ではどれくらい明らかになってきているのだろうと文献をいくつか読んでみました。

読書への意欲と読書の意味づけ : 読書量と読書に対する評価

  • 中学・高校・大学生・大学院生合計281名を対象にした108項目のアンケート。
  • 分析の結果、1ヶ月の読書量が多い回答者・読書が好きな回答者の共通要素の傾向として、家庭の蔵書量や読み聞かせをしてもらった経験、本を買ってもらった経験、親が読書好き、図書館につれていってもらった経験などの家庭環境が挙げられることが分かった。

絵本の読み聞かせと親子のコミュニケーション

  • 幼稚園で読み聞かせボランティアをしている母親9名に、家庭での読み聞かせについてインタビューを実施
  • 多くは0歳児で読み聞かせを開始
  • 子供が絵本の内容を覚えたり兄弟に読んであげるなどの変化のほか、親が子供の変化に気づける、共有するものができて普段の会話などがわかりやすくなる等親子関係における変化があったと回答があった

子どもの言葉を育む読み聞かせの調査研究 

  • 熊本市内の小学生386名にアンケート
  • 0歳児から継続して読み聞かせをしている方が、それ以外の場合より、学業成績が良い傾向にあった
  • 0歳児で読み聞かせを始めた方が、それ以外の場合より、ひとりで本を読み始めるのが早かった
  • 0歳児で読み聞かせを始めた方が、それ以外の場合より、小学校時点での読書好きが多かった

幼児の心情理解に及ぼす絵本の読み聞かせの効果

  • 保育園年長児40名のうち半分に3冊の絵本を2回読み、読んだ子どもと読まない子どもで心情の理解度をはかった(状況を聞いて、そのときの感情に合った表情を描いた絵を選ぶ)。
  • 読んだ子どものほうが理解度が向上するという結果が得られた。

児童のストーリー理解に及ぼす読み聞かせの効果

  • 学校での読み聞かせを念頭にした実験(2年生と5年生、計167名。)
  • 同じ絵本について、読み聞かせをする場合と黙読する場合で、理解の度合いをテストで確認。
  • 結果として、読み聞かせが、黙読に比べて理解促進に効果がある傾向があった(先行研究では2-3年生のみだったが、今回の実験では5年生も)

(これがみんなにあてはまるかというと当然個々の子どもによって違うのでしょうが)読み聞かせによって、将来の読書量が増える、親子のコミュニケーションがとれる、読書好きになる、心情の理解度が高まる、ストーリーの理解度が高まるなどの傾向がそれぞれ結果としてみられていたようです。いろいろある研究のうちほんの一端をランダムに読んだだけではありますが、改めてやっぱりそうなんだと確認できました。


2019年4月27日土曜日

絵本の「絵」がえがくもの

絵本の「絵」の表現に関する面白いコンテンツがあったので見てみました。
Exploring books for children: words and pictures(Open UniversityのMOOC)

全8回分の内容にわかれており、登録をすれば、進捗管理や小テストなどもできるようです。私は登録しようとしたらなぜかエラーになり内容を読むだけにしましたが。。↓の構成でした。
  1. Words and pictures in children’s fiction through the ages
  2. Making sense of pictures
  3. Combining words and pictures
  4. Book design and intended readership
  5. Illustration
  6. Illustration as interpretation: the example of Alice
  7. Analysing images: composition and symbolism
  8. An authorstrator comments on his craft


この講義では、絵本において言葉(テキスト)では語りきれないことを絵が語っているということについて、色々な具体例とともに説明がなされていました。

たとえばピーターラビットの絵本で、母親が子供たちに、マクレガーさんの庭にはに行かないように注意するシーン

テキストはそのことを単に書いているだけですが、絵では4匹の子どものうちピーターラビットだけ母親に背を向けて話をきいておらず、いかにももう出発したそうな顔をして、読み手を次のページへ促していることが紹介されていました。
絵を見ると確かにそうで、このあたりのことが文字でも書いてあったら過剰な感じもするし、こうやって絵本では絵とテキストが補完しあってるんだなぁと思いました。

また、1955年からはCILIPによってKate Greeaway賞がおくられるようになっている通り、絵本における絵の重要性が次第に認識されるようになっているそうです。絵本において、テキスト同様、絵もおはなしを物語る役割を持つという理由で、絵本画家のことを指した‘authorstrator’という言葉があるそうです。

アンソニー・ブラウンの絵本のイラストから、2つの場面がどんな感情や雰囲気を示しているのかを考える事例もありました。色味、キャラクター同士の配置、テーブルの上にあるもの等がそれぞれのシーンの雰囲気を強調していると考えられることが紹介されていました。

アンソニー・ブラウンさんはインタビューで、絵本に盛り込めるテキストは分量上限られているが、絵はさまざまなこと(登場人物の感情や、次に何が起きるか、過去に何が起きたか等)を語ることができ、そういった手法を次第に使うようになったと語られていました。

学術的な研究で提唱された絵本の絵の表現の読み解き方(配置、構図、使用されている色や線の特徴などから読み解く)、も紹介されていましたが、同時に、こういった分析は絶対というわけではなく懐疑的な立場の人もいることなども示されていました。

わかったことをまとめると

  • 絵本の絵には、テキストを補完する大きな役割がある
  • 絵は、ある特徴(色、モチーフ、構図など)をもつことによって特定の印象を人に与えやすい
  • その性質を使って、絵本の中の、登場人物の感情やその場面の状況がうまく表されていることがある

ということです。

日々絵本を読むときに、こういう知識ありきで絵を分析的にみたらつかれそうだし、著者の意図を決めつけることもできないとは思いますが、人の心をつかむ絵本は、そうやって絵の力を生かして物語を効果的に伝えているゆえであることも多いんだろうなと、興味深く感じました。

2019年3月30日土曜日

絵本の美術館、絵本と美術館

この本を読みました。
ぼくが安曇野ちひろ美術館を作ったわけ』松本猛著、講談社、2002

安曇野ちひろ美術館とは、世界で初めての絵本美術館として東京にちひろ美術館ができた20年後に新たに設立された、もうひとつのちひろ美術館です。 ※ちひろ美術館
この本は、美術館の視点から絵本についても考えるきっかけをくれるとても面白い1冊でした。

東京のちひろ美術館をつくられた際は、絵本の原画が芸術的な価値を認められていなかった状況の打開という動機が大きかったようですが、安曇野という自然の豊かな土地で新たな美術館をつくったときには、美術館で絵を見ることをもっと楽しめるようにという強い思いがあったようです。本では次のようなことが書かれていました。

  • 絵を見るとはそもそもどういうことか
  • 絵本の歴史
  • めざした美術館像・こだわり

絵を見るとはどういうことか?については、
  • 知識を得たり勉強するためだけではなく(狭義の勉強ということですが)、心地よい気分になるために見る
  • 自分が好きな、繰り返し見たい1枚、手元におきたい1枚と出会うために見る。
  • 絵の背景にある知識を知ることは絵を楽しむことを補足もするけど、それで絵を知ったことにしてはもったいなく、絵を見て何を感じるかを大事にする。

といったことが書かれていて、絵本についてもほとんど同じことがいえるだろうなぁと、最近の自分の中のもやもやが言語化された感じがしました。絵本も、数ある中から自分の好きなものを探すのが楽しい。

また、絵本の歴史というと、子どものための絵本の歴史(『世界図絵』など)から話が始まることもありますが、この本では『死者の書』から宗教画、日本の絵巻物等、子供向けに限らず人は長い間絵を物語とセットで書いてきていることが紹介されていて、物語と切り離されたファインアートの歴史は肖像画をのぞいてはまだほんの200年くらいだということです。
そう考えると絵本が大人も楽しませるものであることがとても腑に落ちました。

そういった考えに基づいてつくられた絵本美術館は、何より子どもも大人もゆったりリラックスして絵や絵本を楽しめる空間をめざして、家具や建物、カフェの飲食物まで、たくさんのこだわりのもとにつくられているようです。周りにはたくさんの自然があり、いつか行ってみたいなぁと思いました。

2019年3月16日土曜日

娘と楽しむ児童文学

最近は、娘と共通の児童文学作品をよく読みます。
絵本を読んできてよかったのは、日常的に、あの絵本のお話みたいだねーとかそういう共通の話題が自然に出て楽しい、ということだったので、娘の読むもののレベルアップにあわせて自然とそうなりました。
借りたり買ってたりしておいておくと、大体娘は私より先に読んでしまっています。

ここ一年くらいで面白かった本は
■『ふたごの兄弟の物語(トンケ・ドラフト 作、西村由美 訳(岩波書店)

外見は瓜二つ、性格はかなり違うふたごの兄弟が、いろいろな難題に出会って、知恵を使って挑んでいく話です。昔話のように色々な出来事がおきてお話は進むのですが、その中にも、青春特有(?)の心情の描写も出てくるのがまた面白かったです。

娘は私より先に読み終わり、読み終わった瞬間「ジャコモ(ふたごの弟)が仕事を見つけた!」と嬉しそうに言っていました。
その感想だけ聞いて、「どんな話?」と思っていたのですが、読むと確かに、順調に仕事を見つけて地道にキャリアを築く兄ラウレンゾーに比べ、これという仕事を見つけられずぶらぶらしている弟ジャコモの悩み(そうは見せないのですが)みたいなのが確かにこのお話の大きな軸な感じがしました。娘はそんな部分に共感して読んでいたんだなぁ。と親ばかながら感心しました。


他にも↓等、娘に続いて私も読んで、あれこれ話せたのは楽しかったです。
読みやすいと思った順です。
■『おじいちゃんの大脱走』デイヴィッド・ウォリアムズ 著、三辺律子 訳(小学館)

長くつしたのピッピアストリッド・リンドグレーン 作、大塚勇三 訳(岩波書店)
 『ピッピ 船にのる
 『ピッピ 南の島へ

■『ふたりのイーダ』松谷みよ子 著、司修 絵(講談社)

扉のむこうの物語岡田淳 著(理論社)


娘の読書力に私がいつひきはなされるか、て状況でもありますが、これからもついていける限りは一緒に読んで共有できるのは楽しみです。

私は小さいころも読書が好きでしたが、大人になってから、そのころ影響を受けた本とかよく覚えている本がないことに気づいてショックでした。
小さいころおそらく楽しく読んでたし、どこかで何か影響は受けているかもしれず、嘆いても仕方ないですが、冷静に理由を考えると、私は読んだ本について大人や周りの人と話さなかったし、本当はあまり理解していなかったのかなぁ。話すことで理解が深まるんだろうなぁとも思います。

2019年2月10日日曜日

好きな絵本


8年子どもと絵本を読んで実感したことのひとつに、子どもと楽しむために絵本を読むなら、自分が好きな絵本を読むことがかなり大事、ということがあります。
絵本を読んであげる時は、読み手の感動や熱意も子どもに一緒に伝わる、と松居直さんも書かれています。(『絵本とは何か』)

で、絵本をたくさん見てきて、確かに好きな絵本とそうでもない絵本があります。
古く読み継がれている絵本を好きと思うことも多いですが、必ずしもそうでもなく、やっぱり絵本と読む本人(タイミングによってもきっと違う)の組み合わせなんだなぁと思います。

自分の好きな絵本(一部ですが)を書いておこうと思いました。

はなのすきなうし
作:マンロー・リーフ  絵:ロバート・ローソン  訳:光吉 夏弥  出版社:岩波書店  発行日:1954年12月10日

絵は白黒だし、かわいい絵でもないですが、とても心惹かれる絵本です。
のんびり自分の好きなことをする牛も、その子どもをそのまま見守るお母さんも素敵だなぁと思います。
野原に点々と咲く花の絵の描写がきれいで、余白の大事さも感じられます。

モチモチの木
作:斎藤 隆介  絵:滝平 二郎  出版社:岩崎書店  発行日:1971年11月20日

主人公の豆太の育ての親である「じさま」の、名台詞に感動して、時々読んでしまう絵本です。
切り絵が美しく、それぞれのシーンに合った色調や雰囲気で描かれています。
子どもが自分の弱さを乗り越えて一歩前進するところが描かれていて、読んで満足感があります。

8年間の間には、子どもには自分の好みだけじゃなくていろんなものに触れてもらいたいなーと思い、あえて、自分の基本的な好みとは違うタイプの絵本でもいいなと思うものを探して買ったり、親戚からもらった絵本を読んでみたりしてきました。そういう中からも、たとえば↓のように積極的に好きと思うものもできて、よかったと思います。

しちどぎつね
作・絵:田島 征彦  出版社:くもん出版  発行日:2008年04月

落語絵本。かけあいが面白くて、声に読んで出したときはすごく楽しいです。
絵は味があり、滑稽さ、恐ろしさなど、それぞれのシーンの雰囲気がよく出ていて、物語の面白みを増してくれています。


やまこえのこえかわこえて 
作・絵:こいで やすこ  出版社:福音館書店  発行日:2001年10月

きつねのきっこが、他の動物たちと協力して、お祭りのいなりずし作りをします。ちゃんとお話の満足感を得られる絵本だなぁと思います。
絵を見ていると色々とヒントもあって、楽しめます。
あたたかみがあって、好きな絵本です。

自分の「好き」を追求しつつ、他のものにも目を向けて、自分がそれも好きになったらなおよし、絵本に限らず母親(や身近な大人)が心に響くものが多かったら、子どもにもそれが伝わるのかなぁと思います。

2019年1月20日日曜日

絵本の賞の選定基準

絵本に関する賞の選定基準を知りたいと思い、有名な2つの賞について見てみました。下記のページに賞の一覧があります。
児童文学賞一覧(海外の主な児童文学賞)-国立国会図書館国際子ども図書館
児童文学賞一覧(国内の主な児童文学賞)-国立国会図書館国際子ども図書館


1.コルデコット賞(Caldecott Medal)


概要

  • 1938年に創設。
  • 19世紀英国の絵本作家、ランドルフ・コルデコットにちなんで命名されている
  • Association for Library Service to Children(ALA=米国図書館協会の1部門)により授与される
  • 前年に米国の出版社により米国で出版された、英語の、子ども(14歳以下)のための絵本を対象に選定し、画家に授与される

基準

  • いかにうまく芸術的なテクニックを採用しているか
  • ストーリー、テーマ、コンセプトをいかにうまく絵で表現しているか
  • ストーリー、テーマ、コンセプトにいかに合った方法を採用しているか
  • 筋、テーマ、キャラクター、設定、ムードや情報をいかに描写できているか
  • 子供という読み手をいかに理解して絵を表現しているか
(参照:http://www.ala.org/alsc/awardsgrants/bookmedia/caldecottmedal/caldecottterms/caldecottterms


というわけで、あくまで、絵本においてストーリーやテーマを表現する役割としての絵を評価対象としています。
この賞は教訓的な面や人気を評価する賞でないと断ってあります。

2.ケイト・グリーナウェイ賞(Kate Greenaway Medal)


概要

  • 1955年に創設。
  • 19世紀の絵本画家ケイト・グリーナウェイにちなんで命名されている。
  • 英国で前年に出版された、英語の、子ども用の本を対象に選定し、絵の観点で素晴らしい作品に対して授与
  • CILIP(the Chartered Institute of Library and Information Professionals)により選定・授与される

基準


芸術的な質が高く、刺激をあたえ満足のゆく視覚的経験をもたらし、後に印象を長く残す作品におくられる。評価対象は絵のほうで、テキストに関しては絵との相乗効果が評価される。

  • スタイル:媒体が適切か、クリエイティブで突出しているか、テーマにあっているか、作品全体における質の保持
  • フォーマット:タイポグラフィが適切か、レイアウトが適切か、本のサイズ・形は適切か、表紙・裏表紙・標題紙がうまく利用されているか
  • 絵とイラストの評価:絵が読者の理解を深めているか、レイアウト上で絵とテキストがうまく配置されているか、絵とテキストが一致しているか、絵がテキストを深めているか(単なる装飾でないか)、情報(科学)の本である場合に情報が正確か
  • 視覚的な経験:読者に新たな経験をもたらしたり過去の経験を想起させられるか、異なるレベルの読者に対してそれぞれうまくうったえかける本か、本の美的な質、読者への印象

(参照:http://www.carnegiegreenaway.org.uk/awards-process.php#criteria


(上記の具体的なポイントは、必ずしもすべてのノミネート作品にあてはまるわけではないとことわってあります)
やはり、絵を中心にした評価がなされるようです。

こうやって選ばれた作品を読まなければいけない!というわけではなく、好きな絵本を読んでいいと思うのですが、いずれの賞もストーリーをうまく伝える絵の表現という点で突出した作品におくられるようなので、そういった絵本は一つの世界をうまく作って、多くの人の心を打つのだろうなとも思います。

多くの方の経験に基づいて培われてきた基準を参考にしつつ、自分の感覚もたよりに、これからもぽつぽつ集めていこうと思います。

2018年11月18日日曜日

再読『えほんのせかい こどものせかい』松岡享子著

以前にも読んだこの本、文庫になっていたので、買ってもう一度読んでみました。

(版元ドットコムより転載)

 文春文庫
 松岡 享子(著/文)
 ISBN 978-4-16-790946-8   C0195 文庫判 240頁
 定価 680円+税
 発行 文藝春秋
 書店発売日 2017年10月6日



絵本の持つ可能性、読み方、選び方などについて具体的に書かれた本ですが、「よい絵本」について書かれたくだりでは、絵本のはたす役割について明らかにし、その役割をはたすための「よい絵本」という流れで説明されていたので腑に落ちました。

(以前に、「よい絵本」についてまとめてみましたが、絵本に期待する役割が違えば、その文脈での「よい絵本」はきっと変わってくるんだろうなと思います)

本書によると、絵本は子供にとって、次のような役割を果たすので
  1. 文字でものを考える前の段階として、絵でものを考える段階の手助けをする
  2. 子どもの知識や経験の乏しさを補って、想像力に後ろ盾を与える
  3. 美しいものを見ることができ、しっかりしたものの見方のできる目を育てる

次のような条件があるとよいそうです。
  1. 子どもがお話のすじや作中人物の気持を理解でき、作品全体のムードを感じられるものであること
  2. 知識を補うに足る、正確な絵であること
  3. 子どもに美的満足を感じさせてくれること

具体的な方法としては、次のような順番をとって絵本をみられているそうです。
  1. 子どもの心に近づいて、全体を読む(絵だけを見るといい)
  2. 評価の定まっている古典的な作品と比較して、共通の要素があるかを確認
  3. 前述の3点の条件に照らしてみる

とはいえ、こうやって選んだ本について
「それらの本すべてを、すべての子どもが愛読しなければならないと考えるのはまちがいです。本にも個性があり、子どもにも個性があります。一定のふるいにかけられたよい本の中から、ひとりひとりの子どもが、その子にとってよい本を選ぶことがたいせつなのではないでしょうか。」
とも書かれていました。
子どもに読書や特定の読む本を強制するというより、可能性をはばんでしまわないように、大人は試行錯誤しながら環境を整えていくのがいいんだろうな、と思いました。

2018年9月23日日曜日

絵本を娘と7年読んで

子どもと一緒に絵本を7年読んできました。
それでどうだったか書いておこうと思います。


■何をしたか
  • 毎晩一緒に絵本を読む
  • 気に入った絵本は買う
  • 本屋、図書館に行く
  • 感想を聞かない
  • 読書そのものや読む本を強制しない

絵本についてのいろんな本を読んだり勉強して知った↑のことを実践しました。

■どうなったか

私の実践との因果関係は正直わかりませんが、
今の娘(小2)は、とにかく本好きになりました。

本屋に行ったら最近は占いや怖い話の本ばかり読んでますが、
家にある「モモ」のような字の多い本も読んでいます。

普段の会話の中でも、本の内容が登場することもあって、
読んで忘れていってるわけでもなく結構本人に残っているようです。

本好きだけでなく、話好き、人好きでもあるようで親としてはよかったです。

■自分にとってどうだったか

娘が小さいころ、絵本を読むと機嫌がよくなることもよくあり助けられました。

それから、子供と読書について考える中で自分の読書も反省しました。
自分はこれまであんまり考えることなくどんどん読んで、
自分に残るものが少なかったなぁと思い
その後は同じ本を何度も読んだり、本を読んで考えることも増えました。

今では、絵本は娘と私の一緒に楽しめる趣味になって、うれしいです。
先日も娘と、レオ・レオーニ展にいってきました!


これからも、娘と絵本を楽しめたらなぁと思います。

2018年9月9日日曜日

中高大生のための絵本展に行ってきました

9月1日、絵本100冊の集まる絵本展に娘と行ってきました。

中・高・大生のための絵本展

私も娘も中・高・大生ではないですが…
平和や非核に関する絵本100冊が集められていて、2人でもくもくと、1時間半くらい絵本をよみました。
途中、読み聞かせもしてくださいました。

100冊の中には、知らなかった絵本、読んだことがなかった絵本がたくさんありました。
(絵)本と出会う場所・機会が多くあるのはありがたいです。


読んだ本で気になった本、興味深かった本など↓





絵本という形だからこそ、表現できること、読者に伝わることがあるように思いました。

2017年10月1日日曜日

声の力

もうすぐ3歳の姪っ子に会い、(せがまれて)やはり絵本を読みました。



絵本を読んでいると、姪っ子も、
ごにょごにょと一緒に読んでくれてとっても心が温まりました。

たまたまその前日、朗読教室を舞台にしたドラマを見たのですが、
それを見てもやっぱり、声の力ってあるなと思いました。

9月には、昔話絵本の読み聞かせをしていただく機会があったのですが、
そこでも、声の力にじんわり体と心がほぐれるような気持ちになりました。

絵本や文学作品を誰かに読むって、
その人自身がすごく表れるので、とても難しいことだと思います。
なので、読んでいただける機会があると、底知れない感謝の気持ちになります。

親子だとそんな気構えはいらないのですが、
絵本を読んで毎日声を届けることは、
子供に何か大きい影響がある気がしました。

2017年9月24日日曜日

子どもに本を差し出すためには


昨日も娘と図書館に行ってきました。
図書館で本をゆっくり読む休日はリラックスできます。

もうすぐ7歳になる娘は、絵本より対象年齢の高いものを読めますが
親の私がそれに追いついておらず、最近しまったと思っています。

というのは、絵本は家にかなりそろってきて、
娘がその中から選んで読むことができる環境になっていました。

ところが児童文学は、私が選んで家においておくことをできておらず
気づくと娘は、通信教育の付録(?)で利用可能な電子書籍のサイトで
自分で好き勝手に選んで(たいていの場合、漫画っぽいものや学園モノなど)
読んでいました。

自分で好きに選んで読むのももちろんいいのですが、
できるだけいろいろなものに触れてほしい
絵本に関しては、親子で一緒のものを読むことが自分にとってよかったので
児童文学に関しても、自分がいいと思ったのをそっと家においておく、ように
しておきたいです。

昨日も、最初は自分で選んで借りてきた本(やはり学園モノ)を読んでましたが
その後、私が選んで借りたものを読んでいました。
家にある、というのはやっぱり大事なようです。

絵本に関してもそういえば同じ失敗をしていました。
(親の私が詳しくなくて、絵本をそろえるまでに時間がかかった)

そう考えると、絵本も児童文学も、
子供時代をすぎて離れてしまうのはもったいなく、
どんな世代の人も好きな音楽や好きな映画があるように、
好きな絵本や好きな児童文学がある
それを子どもに(わが子でなくても)さっと差し出せて、いいなと思いました。

2016年10月28日金曜日

おすすめ絵本『トムテ』




この本は親戚からゆずり受けました。
トムテとは、スウェーデンなどヨーロッパの国で伝わる、人々を守ってくれる小人だそうです。

絵本ではトムテが、動物も人々も寝静まった静寂の中を、すこし哲学的な物思いをしながら、見回っています。
というと少しこわい感じがするかもしれませんが、ゆっくり流れる静かな時間を楽しめる絵本です。

雪におおわれた情景がとても美しく、ひんやりした空気が伝わってくるようです。

大人の私も、静かな世界にひたれるこの絵本が好きですが、5歳の娘にも何か伝わるものがあるようで、時々この本を一緒に読みます。

こういう絵本は、大勢の読み聞かせ(特に小さい子の)にはむかないかもしれません。

この4月から半年受講した読み聞かせ講座で学んだことですが、大勢の読み聞かせと、親子(など)の1対1の読み聞かせは、それぞれ向く絵本がまったく違っています。

また、大勢でも、その場限りの読み聞かせ(本屋さんや図書館のおはなし会など)と、読み手と聴き手が親密な場合では、やっぱり向く絵本が違うようです。

こういう静かな絵本は、1対1や親密な関係での読み聞かせでこそ、ゆっくり味わい何度も読んで、その余韻をあとから共有するのに向いている気がします。